新連載! むち打ち症、自律神経失調症、起立性調節障害と頸の筋肉との関係を解明する!

第4回:謎解きの旅パート2 – 迷走神経

<解説>

昔の解剖学者が内臓のどこに行くかがわからないので迷走神経という変わった名前がついているんだ。迷走神経は全身の副交感神経の親玉でもあるんだ。自律神経失調症の症状のほとんどが、迷走神経の機能低下で説明できそうだね。

ここで忘れていけないことは、自律神経の機能は、脳から内臓などへ命令を出す(遠心性という)よりは、内臓から脳に情報を上げる(求心性という)情報の方がずっと多い(70-80%)といわれているんだ。

でもどうして、頸と関係のない、頭の中の目の症状や耳の症状がでてくるの?

そこが、謎解きの一番重要なところだよ。謎解きのためには、生物の進化の過程を考えるとわかりやすいんだ。

<次回に続く>

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第3回:謎解きの旅の始まり

<解説>

頸の筋肉と今まででてきた自律神経の症状が関係あるとしたら、どんなことが考えられるの?

うん、それでは一緒に謎解きの旅にでよう。頭痛は自律神経とちょっと違うからあとで考えるとしておいておいて、そもそも、自律神経には交感神経と副交感神経の2つがあるんだ。まぶしい、ドライアイ、すぐに目がぼやける、耳閉感などの症状は副交感神経との関係が強くて、副交感神経の機能が低下するとその症状が出てくるんだ。

自律神経とのどの違和感、胃の不快感、腹痛、動悸との関係はどう考えるの。

ここは一番簡単にわかると思うよ。消化管や心臓など胸郭と腹腔の内臓のほぼすべては、頭部からでて頸の前側の両側を通って胸腔、腹腔に行く迷走神経という超有名な神経に支配されているんだ。

迷走神経??

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第2回:むち打ち症と自律神経失調症の共通症状

<解説>

むち打ち症や自律神経失調症に共通な、各種症状、頭痛、のどの違和感、吐き気、胃の不快感、胃の痛み、逆流性食道炎、腹部膨満感、便秘、下痢、めまい、まぶしさ、ドライアイ、耳鳴り、聴力低下、音がこもる等に関して考えると、まずは消化管と関係すること、さらには、心拍数と関係すること、頭部では頭痛、目と関係するのが、まぶしさ、ドライアイ、あとは耳の鼓膜などとの関係でわけられるんだよ。

そして、むち打ち症でいろいろな症状がでる事に関しては、内科、耳鼻科、眼科、整形外科、脳外科、そして最終的には、心療内科、精神科の医師が、自分の専門分野の考え方で、症状を診断していることが理由のひとつなんだ。

追突事故で頸の筋肉がやられて、上の症状がでてくるわけだから、一つの原因で、全てが説明できる考え方を見つけ出さなくてはならないんだ。また最近、小学生・中学生の患者が急増して社会問題になり始めている、起立性調節障害とむち打ち症の症状はとても似ているんだ。そしてむち打ち症の根本的な治療法をみつけることができれば、起立性調節障害だけでなく、いわゆる髄液減少症、線維筋痛症などの治療にも有効になる可能性が高いんだ。

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第1回:むち打ち症、自律神経失調症、起立性調節障害と頸の筋肉との関係

<解説>

自律神経失調症とはね、不眠、朝起きられない、元気がでない、頭痛がする、めまいがする、胃の調子が悪い、吐き気、などの不定愁訴から、内科や耳鼻科、脳外科などを受診して、血液検査や脳のCT検査などあらゆる検査をしても、異常がみつからない人に対してつけている病名、正確には状態のことなんだ。症状が悪化すると、うつ症状もでてくるので、心療内科や精神科でうつ病という病名がつけられ、睡眠薬や精神安定剤などが処方されることが多いんだ。追突事故などの後2-3週間して出てくる各種症状(頸の筋肉の痛み、頭痛、吐き気、その他)のことをむち打ち症後遺症といって、自律神経失調症の症状と似ているので、頸の筋肉の障害と関係があるのではないかと考えた人がいるんだ。

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“首こり”と“うつ症状”の関係性。

今の精神病としての「うつ」診療とは

「心療内科」あるいは「メンタルクリニック」という看板を、街中でよく見かけるようになりました。今まで精神科の看板を掲げていたのが、よりソフトなイメージを出すようになりました。

こうしたクリニックは大はやりです。東京では、ひとつの大きな駅につき、周辺に5~10ヵ所くらいの心療内科やメンタルクリニックがあるほどです。そのため従来の精神病院に勤務する医師は少なくなり、精神病院は逆に困っているのだそうです。

たしかに、以前のような入りずらさはまったくなくなりました。それだけ心の病が誰にも身近なものになったのだと言えます。中でも、近年爆発的に増え続けているのが「うつ」症状に悩む患者さんです。

ひと口に「うつ」と言っても、それが指し示す内容はひとつではありません。「憂うつである」「気分が落ち込んでいる」というように表現される症状を「抑うつ気分」といいます。そして「抑うつ気分」が重症になったものが「うつ病」です。 一般的に「うつ」という言葉を使う場合、いろいろな程度の患者さんがいることを意味しています。

精神病のうつ病は、まだ発病のメカニズムが解明されていません。

しかし現在、頚性うつ(首から“うつ”)の患者さんはスマホの普及でどんどん増えており、うつ症状のある患者さんの多くは首の筋肉が原因の自律神経異常のうつです。
◆首からうつ「頚性うつ」の記事

先に首こり病(頚性神経筋症候群)の治療では治らないうつ病、つまり精神病のうつについて言うと「大うつ病性障害(大うつ病)」や「双極性障害(躁うつ病)」がそれに相当します。

「大うつ病」とは、症状の強い時は抑うつ状態が非常に強く、ほぼ一日中、ほぼ毎日、長期間(2週間以上)続くような症状を持つものを言いますが、大きな波があり、うつ症状がほとんど出ていない状態もあります。

アメリカ精神医学界が出している診断基準に基づく分類が一般的に使われていますが、そのガイドラインの内容は研究の進展に伴って刻々と変わっています。

「躁うつ病」は、抑うつの状態だけでなく、気分の異常な高揚が続く躁状態も併存するものをいいます。自殺を志向する人が非常に多いことで知られています。

これらの病気の患者さんについては、首に異常があるとは限らず、また首の治療をおこなっても、抑うつ状態が和らぐことはありません。

純粋な精神疾患ですから、治療は精神科による抗うつ剤を中心とした薬物療法、あるいは、カウンセラーやセラピストによる心理学的療法が必要になります。さらに、それでも治らない患者さんには電撃療法(電気けいれん療法/ECT)もおこなわれています。

しかしそれ以外のうつ病と診断された患者さんについては、首こりの治療によって抑うつ状態を緩和することができます。現在増加しているのは「大うつ病」や「躁うつ病」ではない患者さんです。

東京脳神経センターに来院する「うつ病」と診断された患者さんのうち、およそ9割以上がそれにあたります。つまりほとんどのうつ病は、首こり病(頚性神経筋症候群)の治療対象になるわけです。

精神疾患の大うつ病と、首こり病による自律神経性うつ病には、その症状にひとつの大きな相違点があります。それは大うつ病にだけ見られる「理由のない悲しみ」です。悲しみのため、いつも目に涙がたまっているとよく言われます。これは、首こり病による自律神経性うつ病(頚性うつ)ではまず見られません。

大半を占める首の筋肉が原因の「自律神経性うつ」の患者さんは、精神科医による抗うつ剤の投与やカウンセリング、電撃療法(ECT)では効果がまったくないどころか、途中で抗うつ剤の副作用に苦しめられ、治療できないケースも多いのです。

それは当然のことで、別の病気に別の治療をしているからです。これらは、器質的な原因、つまり自律神経の働き、それと密接に関係がある首の筋肉の異常によるものです。これを実証する臨床例は数え切れません。 ※前回の記事では、2020年1月14日に国際医学ジャーナル「ヨーロピアン・スパイン・ジャーナル」に掲載された当センターの研究グループによる研究論文で、うつ症状の完治率が78.1%であることを掲載しています。

抑うつ状態になるのは、精神疾患のせいではなく、自律神経と首、それと全身の不調という三つの要素が生み出す負のスパイラルが原因なのです。

もちろんそれは経験によって裏付けのある考え方です。松井医師によると、「うつ病」と診断された患者さんの頚部を触診すると、その大部分の人の頚部には異常があり、こうした患者さんへの首こり病(頚性神経筋症候群)の治療で抑うつ状態が消えてゆきます。その結果が上記の研究論文にある「78.1%」の改善率ということにつながってきます。つまり首の筋肉の治療でうつ病は治る、ということです。

こうしたケースの場合、顔の表情は暗く、すべてにおいて気分が落ち込んでいますが、治療をするうちに笑顔があふれんばかりとなり、人生が楽しくなり、例えば女性だったら選ぶ服の色などが違ってきて、明るいものを着るようになります。

そしておなかの底から笑えるようになり「もう作り笑いをしなくてよくなった」と言います。治療前に飲んでいた抗うつ剤は、うつ状態が軽くなってくるにしたがって飲む必要がなくなります。

こうした事実を前にすれば、すべてのうつ病が精神疾患であると考えて、抗うつ剤とカウンセリングと電撃療法(ECT)だけに頼っている今の治療は考え直す時期がきていると言えます。それに医療費の削減にもつながるはずです。

重ねて言いますが、現在「うつ病」と診断されているものの多くは心因性のものではなく、器質的なもの、とりわけ首の筋肉が原因になっていると松井医師は分析しています。

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■首こり・自律神経失調症よりも危険なケース
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“首こり”が、 どのように自律神経失調症に影響するのか?

首は神経のスクランブル交差点

首の筋肉の異常が、どのようなメカニズムで自律神経に影響を与えているのかは解明されておらず、いまのところ推測の域を出ません。ただ、はっきりしているのは、首の筋肉のコリ(首こり)を解消すると、自律神経失調症の諸症状が治癒するという現実です。

このことに関しては、原因不明の体調不良『不定愁訴』で入院した患者さん1,863名に対し、頚部筋群への局所療法を行なった結果、退院時には不定愁訴28症状が50%以上の回復率を示しました(下記グラフ参照)。

このことを東京脳神経センターの研究チームがまとめた研究論文が、国際医学ジャーナル「ヨーロピアン・スパイン・ジャーナル」に2020年1月14日、掲載されました。

医学では「原因と症状の発症メカニズムが先にわかって、それに基づいて治療法が発見される場合」と、因果関係は不明でも「症状に対する治療法がわかったので、原因が特定でき、症状発症のメカニズムがあとから解明される場合」とがあります。

首こりによって発症する「頚性神経筋症候群」の治療は、まさに後者のケースであり、そのメカニズムの究明には今後の研究に期待がかかります。 首の筋肉の異常がなぜ不定愁訴の原因になるのでしょうか。推察される範囲で説明したいと思います。

まずは、首の大まかな仕組みを述べておきます。

私たちの身体を支える背骨(脊柱)は「脊椎骨(せきついこつ)」という小さな骨が積み重なった構造をしており、椎骨と椎骨の間にはクッションのような働きをする「椎間板」があります。椎骨と椎骨とはベルトのような「じん帯」でつながれています。

私たちが首と呼ぶのは、脊柱の最上部から7個までを指し、解剖学的には「頚椎(けいつい)」といいます。そして、この上にある約6キログラムの頭部を、頚椎をはじめとする椎骨(ついこつ)と頚部(けいぶ)の筋肉が支えているのです。

頚椎をはじめとする椎骨は複雑な構造で連なっており、その周囲をいくつもの筋肉群が取り巻いているので、頭を左右に動かす、首を回す、首を曲げるなどの複雑な動きが可能になるのです。

また、頚椎には脳と直結する「脊髄」を保護する役割もあります。頚椎の中央には、「脊柱管(せきちゅうかん)」というトンネル状の空間があり、その中を脊髄が通っています。

脊髄からは神経が枝分かれし、脊柱の隙間から出て、肩や腕へと伸びています。この枝分かれした神経の根元を「神経根(しんけいこん)」といいます。

「自律神経」は脳や脊柱の神経節をつくり、さらにそこから各臓器に連絡しています。このように自律神経は、身体中に細かい神経のネットワークをつくり、身体の各部所の働きを自動的に調節しています。

首は脳の一部であり、頚椎が主体となった神経の通り道であり、同時に肩や背中の筋肉の一部が首と連携し頭部を支え、動かす中心的な役割を果たしているのです。

首の動きをあやつる筋肉群

さまざまな筋肉に囲まれ、重い頭を支えているのが頚椎です。頚椎のまわりの筋肉には「僧帽筋(そうぼうきん)」「頭板状筋(とうばんじょうきん)」「頭半棘筋(とうはんきょくきん)」「胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)」などがあります。

僧帽筋は、首から背中にかけて大きく広がる筋肉で、問題を起こす首の筋肉のなかではいちばん表層、つまり皮膚に近いところにあります。この筋肉の首・肩部が収縮することで、肩をすくめるように肩甲骨を上内方へ引き上げます。

頭板状筋は、僧帽筋の下にあり、頚椎の後ろから上外方に伸びて後頭骨の外側と結んでいます。両側が同時に収縮すると、頭を後ろへ反らせ、片側だけ収縮すると、そちらのほうへ頭が回転します。

頭半棘筋は、頭板状筋の下にあり、ほぼまっすぐに上下に走って後頭骨と椎骨の後外側を結んでいます。頭を後ろに反らせる働きがあります。

胸鎖乳突筋は、耳の後ろにある骨の出っ張りとその付近から胸骨と鎖骨を結んでいます。左右同時に収縮すると、首をすくめてあごを突き出す形になります。片方だけ収縮すると、顔を反対側へ回しますが、頭全体は前傾しながら同じ方に傾きます。

以上4つの筋肉のほかにも、小さいながらも重要な筋肉がいくつもあります。頚椎と後頭骨をつなぐ「大後頭直筋」「小後頭直筋」、頚椎の外側と後頭骨の外側をつなぐ「上頭斜筋」「下頭斜筋」などです。いずれも頭を後ろに引いて直立に保つ働きをしています。

これらの首の筋肉のこり(首こり)がひどくなると、自律神経に影響し、副交感神経の働きが低下すると考えています。そのために、頭痛や頭重、全身倦怠感、めまい、不眠、イライラ感、動悸、血圧不安定、発汗、目の乾燥など、さまざまな不快な症状が出てきます。正確なメカニズムは現在研究中です。

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自律神経失調症と首こり(首の筋肉)

自律神経失調症は治療の決め手がない?

相反する作用を持つ交感神経と副交感神経のバランスが崩れ、自律神経が変調をきたすと、動悸、めまい、息切れ、手足の冷え、全身倦怠感、頭痛、頭重、肩こり、不眠、イライラ感など、さまざまな症状が現れてきます。

通常の検査をしても、体にはこれといった異常は見当たらない。このような状態を、ひとまず「自律神経失調症」と呼んでいるわけです。

自律神経のはたらきを司っている中枢は、脳の視床下部ということろにあります。この部位には、不安、恐怖、怒り、快・不快などの情動の中枢もあるため、自律神経は感情の影響を受けやすいのです。

緊張すると、動悸が速くなり、トイレに行きたくなるのは誰もが経験していることでしょう。また気持ちが落ち込んだりしたときには、食欲がなくなったり、夜眠れなくなったりします。これは不安や緊張などの感情によって自律神経が大きく影響を受けたことによります。

これまで自律神経失調症の治療は、一般的に、自律神経調整薬などの薬、食事や睡眠などの生活指導、リラックス法、心理療法などが行われていますが、どれも十分な効果が得られなかったのが現状です。

そのために、自律神経失調の症状である不定愁訴をたくさん抱えた多くの患者さんが大病院の外来をワンダリング(病院を渡り歩く)しています。

こうした中、松井医師は、自律神経失調が首の筋肉の異常で起きることを発見し、研究の結果、現在では特定ポイント34か所を突き止め、首の特定ポイントを治療することで自律神経失調症は治療することができるようになりました。

この研究論文(英文)は、2020年1月14日に国際医学ジャーナルである「ヨーロピアン・スパイン・ジャーナル」に、掲載されています(英文)。
◆Cervical muscle diseases are associated with indefinite and various symptoms in the whole body

またその研究内容を元に「メディカルトリビューン健康百科」に記事が掲載されています。
◆不定愁訴治療の鍵は首の筋肉の緊張緩和

このように、首の筋肉のこり(首こり/肩こり)が自律神経に影響を及ぼすことが、自律神経失調症の大きな原因のひとつになっているという発見で、自律神経失調症の治療は大きく一歩前進しました。

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不定愁訴( 自律神経失調症 )は、 なぜ女性に多いのか?

女性は首の筋肉が弱い。

頭の重さは男女でそれほど違いはありません。そのため、男性に比べて首の筋肉の量が少ない女性は、頭を支えているのが大変で、どうしても首の筋肉にこりを招きやすくなります。これが「首こり」のリスクです。

とりわけ、首が細くて長く、なで肩の女性は、見た目はとてもスマートで優雅に感じられるのですが、一方では首に大きな負担がかかっています。

さて、頚椎は7つの骨が重なってできています。通常、レントゲン検査で側面から頚部を撮ると、筋肉の発達している男性なら、筋肉に覆われているので、上からだいたい5つの頚椎までしか見えません。

しかし、ほとんどの女性では7つの頚椎全てが見えます。女性で肩と首の筋肉の弱い人は、7つの頚椎のほかに、さらに、胸椎の上から3つの骨が、なかには4つの骨が見える人もいます。一般的に、筋肉が細いのが女性の運動器の特徴ですが、首にもあてはまります。

女性(上画像)の中にはこのように首・肩の筋肉が弱いため、第3胸椎まで見える人がいます。このような方は、頚性神経筋症候群のリスクが高いと言えます(上から10個の脊椎が見えています)。男性(下画像)で筋肉が発達している人は、この半分の5つしか見えません(写真では6番目の頚椎まで見えています)。

こうしたことから、首こり病は、美人病と言いかえることもできそうです。つまり筋肉量の少ない細い首・・・竹久夢二の絵にある長く細い首の女性。首の細い、モデル体型の方が“首こり”になりやすい、という意味です。しかし近頃は若い男性の首こり患者も多く、その多くが筋肉量少なめの細身の男性です。

さて、頭の重量は、成人でおよそ6~7キログラムです。これはボーリングの13オンスのボールに匹敵する重さです。この、ずっしりとした重い頭を、前後左右に動かし支えているのが、首の筋肉と頚椎です。

しかし、前傾姿勢などで長時間、首を下向きに固定し続けたり、首を酷使していると、首にこりが生じます。これが「首こり」あるいは「スマホ首」と呼ばれるものです。こうして首のひとつひとつの筋肉が硬直して硬くなってくると、自律神経に影響が出て、不定愁訴( 自律神経失調症 )の原因となります。

働く女性の職場環境にも影響する

それでは、次に職場の環境に目を向けてみましょう。

職場の室温(電車なども)は、スーツ姿でちょうどいい温度に設定されているところがまだまだ多いのではないでしょうか。また、夏場、クールビズが施行されていて、薄着になっているところに、エアコンの冷気が当たります。

男性はクールビズでノーネクタイではありますが、ワイシャツの襟で首は守られています。しかし女性は襟なしのスタイルで、首をむき出しにしている人がとても多く、男性に比べて多くの女性の首はまったくの無防備状態です。

人の体で、いつも外気に触れているのは顔と首ですが、首は冷やすと自律神経失調の異常を起こします。顔は冷えても、問題を起こすことはほとんどありません。だからこそ、無防備な首にスカーフなどを巻いて冷やさないことが大切です。

首の筋肉は風邪とも密接な関係があります。首を冷やすと、昔から“万病の元”と言われている風邪をひきやすくなります。

女性がオフィスで、よくひざ掛けや腰にショールを巻いている姿を見かけます。本当は首や肩も冷気から守っていただきたいものです。首の冷えは血行を悪くしてこりを定着させてしまいます。

今やパソコンのないオフィスは考えられません。しかし、パソコンに一日中向かっていると、首や肩、腕の疲れから頭痛を訴えたり、目の痛み、閃光を覚えたりといった複合症状を起こすことがあります。これを放置しておくと、首のこり(首こり)が不定愁訴の原因となりますので、早めに対処するようにしましょう。

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■首こりと不定愁訴


首のこり「首こり」が原因でうつを発症!? それが「首から“うつ”(頚性うつ)」

実は、うつ(気分障害)の多くは首・自律神経の治療で 改善させることが可能です。

松井医師は多くの臨床例より、首の筋肉異常によって発症する不定愁訴から「うつ」を発症することを突き止めました。そして、このことを「頚筋性うつ」と呼びました。首の筋肉異常が引き金となる頚筋性うつは「頚性うつ」あるいは「首からうつ」と呼ぶこともできます。

繰り返しになりますが、首の筋肉の異常が原因で不定愁訴(原因不明の体調不良)を発症し、さらに首の筋肉の異常が“うつ”を発症させるという、これまでに誰も想像することもなかったことが現実に起きていました。

うつ症状が出ているところに、周囲の人たちの無理解が重なり、さらにどこの病院に行っても原因がわからず、「異常なし」と言われ、その結果、本人だけが苦しみ自殺志向へと向かわせることもある非常に怖い病気です。

しかもこの「うつ」は、精神疾患の「うつ病」とは全く関係ない病気です。これを従来のうつ病と同じ治療を施しても治るわけがありません。

必要なのは適切な診断・治療

このような不定愁訴があると、女性なら、婦人科を受診して「更年期障害」と言われたり、精神症状が強くて心療内科や精神科を受診した場合には「うつ」や「不安障害」あるいは「適応障害」などの病名を付けられることも少なくありません。

これらの病気の特徴的な症状には、自律神経失調症の症状がいくつも含まれるからです。

同じ理由から最近では、まだ医学的に病気の全体像がはっきりしていない「慢性疲労症候群」や「線維筋痛症」と診断されているケースもあります。

診断名はさておき、患者さんが切に望んでいるのは、一刻も早くつらい症状から解放されること、それだけです。しかし、残念なことに、どこの病院やクリニックで治療を受けても改善せず、当センターを受診する患者さんが後を絶ちません。

なぜ、治療をしても治らない不定愁訴があまりにも多いのでしょうか?その理由のもっとも大きな原因が「首の筋肉の異常」であり、これを正確に診断できるドクターがとても少ないからだと考えています。

さらに言えば、その後の適切な治療が行われていないからなのです。なんだか体調がすぐれず、何をしても改善しないのであれば、首の筋肉の異常を疑ってみてください。そしてそれを作り出しているのは、昔のムチウチ症だったり、日常的な猫背、スマホやデスクワークの際の下向きに固定された首の可能性があります。

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・ その肩こり、もしかしたら首こりかもしれません。

(C)東京脳神経センター

首こりと不定愁訴

動悸、めまい、多汗、不眠、下痢・便秘、ドライアイ・・・つらい症状があるのに、検査をしても異常なし、というケースは少なくありません。こうしたケースでは、検査で異常が認められないため、その症状を緩和する薬の処方だけということが多くなります。

上記のように原因がわからない体調不良を不定愁訴と呼びます。この不定愁訴は広辞苑と医学大辞典にも説明されていますのでご紹介します。

・広 辞 苑:明白な器質的疾患が見られないのに、さまざまな自覚症状を訴える状態。

・医学大事典:自覚症状が一定せず、その時どきによって変化する訴え。動悸、息苦しさ、発汗、頭重、不眠など多種多様であるが、自律神経系が関与する身体的な症状が中心である。幼児期から老年期に至る全ての年齢層にみられるが、初老期(女性では更年期)がいわゆる自律神経失調症にかかりやすいため、特定の病気がなくともしばしば認められる。

そもそも不定愁訴とはどのような状態なのでしょうか?またどういった症状が不定愁訴なのでしょうか?こうした基本的な疑問や、あまり知られていない問題に触れて行きたく思います。

原因不明の病、不定愁訴
頭痛、全身倦怠感(だるい)、慢性疲労(疲れがとれない、疲れやすい)、微熱がある、耳鳴り、めまい、動悸、息切れ、発汗・多汗、冷え性・のぼせ、イライラ、不安感、うつ症状といったさまざまな症状を呈する病気には、神経系、内分泌系の障害や免疫疾患、脳疾患など、重大な病気が存在していることがあります。

繰り返しになってしまいますが、一方でいくら検査をしても、症状の原因となる異常が体の組織や細胞に見つからないことも多いのです。このように、いくつものつらい自覚症状を持ちながら、検査をしてもはっきりとした原因が見つからない症状をまとめて「不定愁訴」と呼んできました。

不定愁訴は“自律神経失調症”の症状です。東京脳神経センターの理事長、松井医師は約30年前に首の筋肉の異常で自律神経失調症を発症することを見つけ、これを「頚筋症候群(首こり)」と呼びました。しかし、その治療法がわからず、試行錯誤の末に2005年、頚筋症候群(首こり)による自律神経失調の症状を改善する有効な治療方法を見つけ出し、完成させるに至っています。

この不定愁訴は、自覚症状があっても、なかなか他の人にわかってもらいにくい、伝えにくい症状であるため、周囲に十分理解してもらえないという特徴があります。そのために、落ち込んだり、ご自身を責めたり、苦悩している方が少なくありません。

あちこちの診療科をめぐったあげく、心の問題だとして、最後にはメンタルクリニックを紹介される方も少なくありません。このような際には、いちど、頚筋症候群(首こり)を疑ってみることをお勧めします。

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