自律神経失調症とはどのような病気なのですか?

自律神経で体の自動調節が保たれています。

私たちの神経系は、大きく中枢神経系と末梢神経系とに分けられます。
中枢神経は、脳と脊椎から成り立っていて、脳は頭蓋骨に納まり、脊椎は脳から垂れ下がるような形で頚椎の中を通っています。

末梢神経は脳や脊椎に発し体の各部に及んでいる神経で、大きく分けると、体性神経と自律神経の2種類があります。

体性神経はおもに筋肉や骨格に分布し、体の各部の運動機能や感覚機能をつかさどっています。例えば手足を動かす、話をする、食事をするといった筋肉や骨を動かすときや、痛みや、冷・熱感などを脳に伝えるときに働きます。別名「動物神経」とも呼ばれている神経です。

一方、自律神経はおもに内臓や血管、分泌腺などに分布し、消化や呼吸、循環、代謝といった、生命を営んでいくうえで必要な生理機能を調節しており、自分の意思とは無関係に働く神経です。

たとえば動悸がしたり、胃や腸の運動や消化液の分泌量を決めるのも、この自律神経のはたらきによるもので、別名「植物神経」とも呼ばれています。

自律神経はさらにその役割として「交感神経」と「副交感神経」の2種類に分けることができます。交感神経はおもに昼間の活動的なときにはたらく神経で、緊張しているときや危険を感じたとき、興奮したときなどにはたらき、心拍数や血圧を上げ、呼吸数を増やし、血管を収縮させ、目の瞳孔を開き、胃腸のはたらきを抑制したりしています。

これに対し、副交感神経はリラックスしているときや、寝ているときなどにはたらく神経で、交感神経とちょうど反対の役割を果たします。

私たちが意思の力で汗を出したり、心拍を速めたりはできません。これらは自律神経が環境に応じて身体の機能を自動的に調節しており、交感神経と副交感神経がバランスよくはたらくことで、私たちの健康と生命は支えられています。そして、このバランスが崩れた状態が自律神経失調症です。

首の筋肉の異常で起こる自律神経失調症は、常に交感神経が強く、副交感神経が弱い状態になります。ただ、自律神経については十分に解明されているわけではありません。首こりの視床下部(内分泌や自律機能の調節を行う総合中枢)への関与についても研究途上です。

運動神経より、自律神経のほうが重要であることは、誰もが認めているところです。運動神経がはたらかなくなっても、手足が麻痺する程度ですが、自律神経は生命に関わるような重大な問題が起こります。

自律神経については、今でもわからないことが多かったので、これを専門にする医師も少なかったのです。解剖によっても、まだ正確にはわかっていません。

【関連記事】
■ “首こり”から頭痛、めまい、うつ、自律神経失調症が発症する。

■首こり・自律神経失調症よりも危険なケース

■首こりとうつ

(C)東京脳神経センター

首こりと不定愁訴

動悸、めまい、多汗、不眠、下痢・便秘、ドライアイ・・・つらい症状があるのに、検査をしても異常なし、というケースは少なくありません。こうしたケースでは、検査で異常が認められないため、その症状を緩和する薬の処方だけということが多くなります。

上記のように原因がわからない体調不良を不定愁訴と呼びます。この不定愁訴は広辞苑と医学大辞典にも説明されていますのでご紹介します。

・広 辞 苑:明白な器質的疾患が見られないのに、さまざまな自覚症状を訴える状態。

・医学大事典:自覚症状が一定せず、その時どきによって変化する訴え。動悸、息苦しさ、発汗、頭重、不眠など多種多様であるが、自律神経系が関与する身体的な症状が中心である。幼児期から老年期に至る全ての年齢層にみられるが、初老期(女性では更年期)がいわゆる自律神経失調症にかかりやすいため、特定の病気がなくともしばしば認められる。

そもそも不定愁訴とはどのような状態なのでしょうか?またどういった症状が不定愁訴なのでしょうか?こうした基本的な疑問や、あまり知られていない問題に触れて行きたく思います。

原因不明の病、不定愁訴
頭痛、全身倦怠感(だるい)、慢性疲労(疲れがとれない、疲れやすい)、微熱がある、耳鳴り、めまい、動悸、息切れ、発汗・多汗、冷え性・のぼせ、イライラ、不安感、うつ症状といったさまざまな症状を呈する病気には、神経系、内分泌系の障害や免疫疾患、脳疾患など、重大な病気が存在していることがあります。

繰り返しになってしまいますが、一方でいくら検査をしても、症状の原因となる異常が体の組織や細胞に見つからないことも多いのです。このように、いくつものつらい自覚症状を持ちながら、検査をしてもはっきりとした原因が見つからない症状をまとめて「不定愁訴」と呼んできました。

不定愁訴は“自律神経失調症”の症状です。東京脳神経センターの理事長、松井医師は約30年前に首の筋肉の異常で自律神経失調症を発症することを見つけ、これを「頚筋症候群(首こり)」と呼びました。しかし、その治療法がわからず、試行錯誤の末に2005年、頚筋症候群(首こり)による自律神経失調の症状を改善する有効な治療方法を見つけ出し、完成させるに至っています。

この不定愁訴は、自覚症状があっても、なかなか他の人にわかってもらいにくい、伝えにくい症状であるため、周囲に十分理解してもらえないという特徴があります。そのために、落ち込んだり、ご自身を責めたり、苦悩している方が少なくありません。

あちこちの診療科をめぐったあげく、心の問題だとして、最後にはメンタルクリニックを紹介される方も少なくありません。このような際には、いちど、頚筋症候群(首こり)を疑ってみることをお勧めします。

(関連記事)
■ “首こり”が、 どのように自律神経失調症に影響するのか?
■ 首こり・自律神経失調症よりも危険なケース
■自律神経の機能を検査する 自律神経ドックを開始しました。

うつ、慢性疲労、パニック障害、更年期障害(難治性)は、自律神経を疑ってみる。

スマホ首病が日本を滅ぼすより抜粋/一部修正)
現在、数多くの方が、原因不明の体調不良で苦しんでいます。

慢性的に疲れていたり、朝からだるく、病院に行っても原因不明。
首、肩、背中が痛くて整形外科に行っても異常なし。
船に乗っているようにフワフワするので耳鼻科に行っても異常なし。
吐き気、胃部不快感で内科に行き内視鏡検査でも異常なし。
動悸に悩み心臓や循環器系の病院を受診したが異常なし。

このように体の不調を感じて病院にかかっても、その原因が特定できないことがとても多いのが現状です。こうした、さまざまな自覚症状があるのに、検査をしても原因が判明しない症状のことを“不定愁訴(ふていしゅうそ)”と呼び、首こり病の典型的な症状です。

首こり病(自律神経異常)の問診表からもわかるように、症状が多く、少なくとも10以上の診療科科目にわたります。ひとつの科目では対応できないため、さまざまな病院を巡ることになってしまいます。何十か所もの医療機関を受診したという患者さんもいるほどです。

ある患者さんの場合、最初は内科でした。そこでは更年期障害と診断されたわけですが、軽快することはありませんでした。次は整形外科、その次は耳鼻科へ行き、最後に助けを求めたのが心療内科でした。患者さんによっては、このほかに消化器科、循環器科、神経内科、眼科などを経由してくることもあります。

最後にたどり着いたのが、心療内科、あるいは精神科という人は、この病気の患者さんに見られる典型的な例です。いくら精密な検査をしてもからだに異常が見つからないので、きっとこれは心の病気だろう、という結論に達してしまうわけです。

心療内科ではSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの抗うつ剤を出されるだけ、というケースがほとんどです。

しかしどれは単なる思い込みであり、正しい判断ではありませんでした。“この病気”は心の病気とは関係のない器質的疾患であることがほとんどです。精神病である大うつ病と、自律神経性うつ病の違いについては、また別項目で取り上げることにしましょう。

さて、この病気について私(松井孝嘉医師)が到達した結論をもういちど整理しておきましょう。

首の筋肉が異常をきたし、それが原因となって自律神経、特に副交感神経の働きが弱まってしまい、そのためにさまざまな症状を心身に引き起こしているのです。ですから、たとえ抑うつ症状が認められても、新しい器質的な別の病気ですから、心療内科や精神科では治すことはできません。結局、どこへ行っても、どんな薬を飲んでも治ることはないのです。

私の発見した治療では、この病気(首こり病)の原因である首の筋肉、それも異常を起こしている筋肉を治療するので、治療が終わればすべての症状が消失して、再び症状が出ることはほとんどありません。うつ症状も98%以上治癒しています。薬を飲む必要も、一切なくなります。再発は極めて低いと考えてください。

こうした不定愁訴の原因の多くは、首の筋肉の異常にある・・・1978年に私が発見してから約40年。今なお、その事実をわかっているドクターは、日本中を探してもほとんどいないのが現状です。

いったいそれは、どうしてなのでしょうか?

ひとつには、現在の細分化された医療体制を挙げることができます。私は脳神経学会と、その関連学会に所属しており、そこで首が原因のさまざまな病気の現状や、研究結果などを発表しています。

しかし、私は内科、精神科、耳鼻科、眼科、循環器科、消化器科、整形外科など各学会の会員ではありません。すると、ほかの専門科のドクターに、この病気の存在を知らせることは大変難しくなります。

筋肉は本来、整形外科の領域になります。ところが整形外科医の多くは硬い骨と間接ばかりに関心があり、筋肉を専門にしているドクターはほとんどいないというのが現状です。

人体は依然として神秘に包まれており、まだわからないことばかりです。首こり病(頚性神経筋症候群)について言えば、松井式治療法によって治癒に向かうという事実を積み重ねています。それにより、首の筋肉の異常と自律神経(副交感神経)の異常に相関関係があることはわかっています。しかしその学術的根拠を提示するには、さらなる研究成果の積み上げが必要です。(「スマホ首病が日本を滅ぼす」より)

ただし、このような症状は、すべて自律神経失調症、首こり病だとは限りません。下記のような危険なケースもありますので注意が必要です。
■首こり・自律神経失調症よりも危険なケース

■2019年6月 頚部の低周波治療によって、数々の不定愁訴が改善する研究論文(英文)が、イギリスの学術誌BMC Musculoskeletal Disordersに掲載されました。

首こりが消えれば不調が消える。 首こりを治せば、間違いなく人生が変わる。

今回は・・・首こりと、パニック障害やうつ、慢性疲労など、深刻な自律神経失調症との関係について触れた『スマホ首病が日本を滅ぼす(ワニブックス)』から、その一部をご紹介します

自律神経とは、意識とは関係なく、生物が生きていくためのさまざまなからだの働きを自動制御するシステムです。「交感神経」と「副交感神経」をアクセルとブレーキのようにバランス良く使って、人間のからだの調子を整えています。

首は、脳と全身とをつなぐ通り道・・・しかも、とても細くて弱いパイプラインです。この細いパイプラインに、背骨、気道、食道、血管、自律神経を含む神経系などがきちっと収まって通っています。ところが、首の筋肉がこってしまうと、神経の働きに影響が出てしまうのです。

それはなぜか?

副交感神経の働きが悪くなり、自律神経のバランスが崩れ、働き方の調子が狂うと「自動運転」が上手く機能しなくなってしまうからです。

その結果、多くの場合、次の16の病気・症状のうちのどれか、もしくは複数があらわれます。それは、緊張型頭痛(後頭神経痛)、めまい(ふわふわ、ふらふらも含む)、パニック障害、更年期障害的な諸症状、動悸、慢性疲労、多汗症、不眠症、血圧不安定症、下痢・便秘、起立性調節障害などです。

これらの病気・症状は、いずれもからだの調節機能である自律神経の乱れによる病気・症状なので、まるで機械の調節つまみの位置がズレてしまったかのように、普段と比べてなんとなく調子が悪いという違和感を感じるようになります。

他人には自分のつらさがわかってもらえないことが多く、医療機関で検査を受けても、ほとんど異常なしという結果に終わります。そのようなことが患者さんを孤立させ、悩みを深くさせてしまうのです。

先ほどの諸症状は、まさに自律神経失調症の典型的な症状です。その症状が長く続いたり、ひどくなってくると日常生活にも支障をきたすようになり、やがて抑うつ状態へと陥るケースが少なくありません。

自律神経の乱れから発症する「うつ病」は、進行するにしたがって自殺念慮を持つようになるという特徴があります。まずは首こり~首こり病が発端となり、自律神経の乱れ(自律神経失調)、さまざまな全身の不調へと拡大し、精神も蝕んでいくという、この病気の仕組みを理解することが大切です。

そして、心身がそんな深刻な状態にならないように、からだの不調を感じたら、まずは首こり病を疑い、しっかりと診断を受けた後に治療することが大切です。しかしながら先ほどの諸症状・・・緊張型頭痛、めまい、パニック障害、更年期障害(難治)、難治性むちうち症、慢性疲労、ドライアイ、多汗症、不眠症、機能性胃腸症・過敏性腸症候群(下痢・便秘など)、機能性食道嚥下障害、血圧不安定症、VDT症候群、ドライマウス、起立性調節障害、そしてそれらを統合した自律神経失調症・・・・その先にある自律神経性うつ病、これらの病気・症状は、これまで治すのが困難だと言われていました。

しかし松井医師(東京脳神経センター理事長/ネッククリニック福岡・ネッククリニック大阪・ネッククリニック名古屋・ネッククリニック愛媛)が確立した診断法・治療法によって、よほど困難なケースを除いて、首こり病を治すことで治癒、改善または完治できるようになっています。
ワニブックス社「スマホ首病が日本を滅ぼす」より抜粋 )

■ 自律神経の機能を検査する 自律神経ドックを開始しました。

うつ症状、慢性疲労、睡眠障害、ふらつき、動悸、パニック障害などなど・・・不定愁訴の原因

 体がだるい、頭が重い、フラツキがある、寝付きが悪い、気分が沈むなどの「不定愁訴」は、どの診療科を回っても確たる診断が下されず、最後には心療内科へたどり着くことが多い。しかし心療内科でも、睡眠薬や安定剤などが処方される対処療法がなされるだけで、根本治療とはほど遠いのが現状です。

 首こり博士・松井医師は、こうした不定愁訴の根底には、実は「首こり」があると見ています。専門的には頚筋(けいきん)が異常を起こすことで、副交感神経の働きが鈍くなるのです。

 電車に乗っていると、ほとんどの人がうつむいてスマホを見ている。パソコンを見る際も、たいていの場合、下向き加減になります。このように首が長時間下向きに固定されると、首の筋肉の使いすぎを招き、その結果「首こり」によって副交感神経の働きが影響を受けて不定愁訴リスクが高くなります。

 首の筋肉が異常を起こす原因は主に3つあり、「頭を打つ、むちうちなど外傷によるもの」、「スマホやパソコンなどを長時間使うことによる首の使いすぎ」、そして「元々首の筋肉が弱かったり、猫背などによるもの」と松井医師はみています。

そして近年ではスマホによる弊害が急速に増加しています。これについて松井医師は以下のように述べています。

 「スマホが登場した2010~2011年以降、首の筋肉に異常が見られる人が激増した。首の筋肉は、ある程度までは使いすぎても元の状態に戻るが、一定レベルを超えると固くなって伸び縮みできなくなってしまう。診察時に、骨や鉄のように首の筋肉が固くなっている人をよくみるが、ここまでくると元には戻らないので治療が必要になる。アメリカでもスマホの普及と比例するように10代・20代の若者の自殺率が急増しているが、その原因がわからないため問題になっている」

 首の筋肉の異常が起きるのは、首の後ろ側にある太い筋肉。うつむきがちの姿勢を続けると、首をまっすぐにしている状態より、およそ3倍も首に負担がかかる。ちなみに、頭の重さは平均的なボーリングの玉と同じ6キロ前後。頭を支える首が、うつむき姿勢のおかげで過度な負担にさらされています。

なぜ首を使いすぎると不定愁訴につながるのだろうか?

「首を使いすぎて首の筋肉がこると、副交感神経がうまく働かなくなる。副交感神経とは、睡眠や入浴時などに活発になり、体をリラックスさせる自律神経。どうして首がこると副交感神経の働きが低下するのか、そのメカニズムはまだよくわかっていないが、臨床上、多数の症例で確認はできている。副交感神経がうまく働かなくなると、眠りが浅い、寝付きが悪い、疲れやすい、気分が落ち込む、やる気が出ないなどの症状が現れる。重度になると、うつ状態となり、重症になるとほぼ全員が自殺念慮を持つことも分かって来ている。これらの症状は他の疾患でも起こりえるため、誤診されている例がとても多い」

 本当は首こりが原因なのに、他の疾患だと誤診されているものには、うつ病、頭痛、めまい、パニック障害、慢性疲労、更年期障害、胃腸障害、ドライマウス、ドライアイなどがあります。

 これについて、2019年6月、イギリスの学術ジャーナルBMCに、東京脳神経センター(理事長・松井孝嘉)の研究チームによる、首こりの治療と不定愁訴が80%以上の回復率を示す研究論文が掲載され、日経新聞、朝日新聞ほかにも取り上げられています。

 首がこっている人は、ほとんどの場合、全身の疲労を訴える。副交感神経の働きが鈍くなると、原因不明の疲れが出てきます。この両者の関係はちょうど昔の井戸の水をくむツルベと同じ。副交感神経が正常で高い位置にあれば疲労は全く出てこないが、副交感神経のレベルが下がると原因不明の疲労が出てくることが多くの臨床結果からわかってきました。

「目が乾燥する」「口が渇く」という項目を不思議に思う人がいるかもしれないが、涙やだ液は副交感神経が働くことで分泌されるので、ドライアイやマウスは首こり病が原因となっている可能性がある。これらの症状が見られる患者さんの多くが首こりの治療で改善しています。

 そのほかにも首こりの患者さんは原因不明の微熱の出ることが多い。何日も検査入院して結局何も異常が見られず原因がわからなかったという患者さんが検査の結果、首の筋肉に異常が見つかり、治療を行い正常になると微熱も消えるというケースがほとんどです。

ところで、首こり病の患者さんによく見られる、外見的な特徴はあるのだろうか?

 それは、瞳孔の開いている人が多いということ。診察時に、瞳に光を当てても反応がない。副交感神経の働きにより瞳孔は閉じるので、副交感神経の働きが悪くなっている証左だと考えられる。そして、笑顔が作り笑いになっている人が多いという特徴もある。治療を行うと、ほとんどの患者さんに自然な笑顔が戻ってきます。

 また、40代後半から50代の女性が悩む更年期障害も、実はその70%以上が首こりが原因となっていることが多い。 東京脳神経センターにて松井医師が診察した結果、女性ホルモンのゆらぎが原因となっている更年期障害は3割程度。残りのおよそ7割は、首こり病が原因と考えられる。婦人科でホルモン補充療法などを受けてみても治療が奏功しない場合は、首こりが原因ではないか疑ってみてほしい。更年期障害を訴える女性の多くが、首こりの治療を行うことで症状が軽快・消失しています。

原因不明の体調不良、自律神経が原因かもしれません。

頭痛、めまい、自律神経失調症、うつ状態、パニック障害、ムチウチ、慢性疲労、胃腸不良、難治性の更年期障害・・・こんな不調に悩んでいませんか?長年、自律神経失調の治療に携わってきた松井孝嘉先生は、こうした不調の原因が「首(自律神経)」にあることを、著書や研究論文などで発信し続けています。その知られざるメカニズムと、みるみるカラダがよみがえる治療法&予防法の一部を、その著書よりかいつまんでご紹介します。

自律神経には「アクセル」と「ブレーキ」がある

よく知られるように、自律神経には「交感神経」と「副交感神経」とのふたつがあります。

交感神経は、心と体を「がんばるモード」にシフトする神経です。これを「戦闘モード」と言い換えてもいいかもしれません。

この神経は、仕事で緊張したときや身の危険を感じたとき、スポーツや人間関係で何かを争っているときなど、“ここぞ”というときに優位になります。そういった場面でより力を生み出せるよう、心拍数や血圧を上げ、呼吸を速くし、血管を収縮させて、心と体を焚きつけるように働くのです。

これによって胃腸の動きは鈍くなります。言うなれば交感神経は、よりがんばるための「心身のアクセル」のような役割を果たしているわけです。

一方の副交感神経は、心と体を「リラックスモード」にシフトする神経です。

こちらの神経は、安心してくつろいでいるときや寝ているとき、気持ちが癒されているときなどに優位になります。よりゆっくりと休めるように、心拍数や血圧を下げ、ゆったりした呼吸にし、血管を拡張させて、心と体を落ち着かせるように働くわけです。

これによって胃腸の動きは活発になります。副交感神経は、よりリラックスするための「心身のブレーキ」のような役割を果たしているといっていいでしょう。

なお、この「アクセル」と「ブレーキ」は、両方がバランスよく使われていてこそ、うまく機能するものです。車やオートバイなどもそうですが、スピードを上げたいときは「アクセル」を踏む、スピードを落とすべきときは「ブレーキ」をかけるといった絶妙のコンビネーションが成り立っていて、はじめてうまく運転できるものです。

それと同じように、人間の体も「交感神経というアクセル」と「副交感神経というブレーキ」をバランスよくかけることができないと、自分という“車体”をうまく乗りこなせないようにできているわけです。

しかし、この「アクセル」と「ブレーキ」がうまく機能しなくなったら、いったいどうなることでしょう。スピードが出すぎたり、ブレーキが利かなくなったりすれば、自分という“車体”が操縦不能になって、あっという間に事故や問題を起こしてしまうのではないでしょうか。

すなわち、自律神経の失調状態とは、このように「交感神経=アクセル」と「副交感神経=ブレーキ」のバランスがとれなくなってしまった状態のことを指しているのです。

首の筋肉異常をきっかけとして、「アクセル」と「ブレーキ」の配線が混乱を起こし、「胃腸の調子がおかしい」「動悸や息切れがする」「体温がうまく調節できない」「血圧が安定しない」といったさまざまな“故障”が、次から次に“車体”のあちこちに出てきてしまうわけです。

「首こり」が自律神経を乱す

では、首疲労による自律神経失調では、「アクセル」と「ブレーキ」にどのような問題が生じているのでしょうか。

これは、どうやら「ブレーキ」側に問題があるようです。

副交感神経のほうが失調をきたし、その結果、相対的に交感神経のほうが優位な状態が続くことになってしまう。すなわち、「副交感神経というブレーキ」の利きが悪くなったために、結果的に「交感神経というアクセル」をずっと踏み続けているような状態になってしまうとみられるのです。

これは人間の心身にとって、たいへん危険な状態です。交感神経は“ここぞ”というときに「戦闘モード」になって力を出すためのシステム。それが「アクセル」を踏みっぱなしで、常時「戦闘モード」のような状態になっていては、心も体もすぐにエネルギー切れになって燃えつきてしまいます。

休みたくても「ブレーキ」がうまく利かないから休むこともできない。それで、心身が疲弊しきって“燃えカス”がくすぶっているような状態のまま、延々と走らされるようなハメに陥ってしまうわけです。

こんなひどい状態では、心や体の機能が大きく落ち込み、さまざまな“故障”が発生するのも当然でしょう。

自律神経失調症というのは、このように心と体のコントロール機能がアンバランスになってしまう病気なのです。

ちなみに、自律神経失調症は、長らく“治療のしようがない病気”と見なされてきました。病院を受診しても、たいていは当面のつらさや痛みをごまかす薬を出されるだけ。その薬が切れればまたつらくなるうえ、神出鬼没というほどあちこちにいろいろな症状が現われるのです。

それで、体のあちらこちらで悲鳴が上がるたびに、薬に頼って症状をごまかす。そんな“堂々巡り”を繰り返すうちに、すっかり“薬漬け”になってしまう患者さんもたくさんいらっしゃいました。

しかし、その病気が首の筋肉疲労をとることによって“完治可能”となったわけです。現在のところ首疲労治療は、自律神経失調症を根治させることのできる治療法といっていいでしょう。
◆自律神経機能を検査する「自律神経ドック」

松井先生 近著:自律神経が整う 上を向くだけ健康法

原因不明の数々の体調不良の治療に関する研究論文が イギリスの医療・学術ジャーナル「BMC Musculoskeletal Disorders」 に掲載されました

東京脳神経センター(理事長・松井孝嘉)の研究チームが複数の不定愁訴を伴う難治性むち打ち症の入院患者を対象に独自に開発した頚部筋群への物理療法を行なった結果、退院時には殆どの全身の不定症状が80%以上の回復率を示しました。

その成果を報告した英字研究論文がイギリスのBMC Musculoskeletal Disordersに掲載されました。

実は松井医師の首こり病(頚性神経筋症候群)の研究の端緒になったのが頭部打撲・むち打ち症でした。

 当時も今も、むち打ち症の患者の多くが原因不明の体調不良に悩まされていました。首(頚筋)を触診すると一様に特有のコリが見られ、これによって頚筋のコリと原因不明の体調不良とは関係性があるのではないか、ということから研究し、臨床を重ね、不定愁訴の原因である「頚性神経筋症候群(首こり病)」を発見。試行錯誤の結果、治療法を確立しました。

 首こり病は筋肉の少ない女性に多く、近年では幼少時代に屋外で遊ぶことの少なくなった若い男性も増加しています。パソコン、スマホ、家事、介護・・・など下を向く習慣から発症し、頭痛、めまい、うつ、動悸、パニック障害、冷えのぼせ、ドライアイ、ドライマウス、多汗、血圧不安定など原因不明と診断される数々の体調不良を訴えます。

以下にプレスリリースの内容を記載させていただきます。

<全身の不定愁訴を伴う「むち打ち症」の病態解明・原因療法確立への突破口>

 東京脳神経センター(理事長・松井孝嘉)の研究チームが複数の不定愁訴を伴う難治性むち打 ち症の入院患者を対象に独自に開発した頚部筋群への物理療法を行なった結果、退院時には殆ど の全身の不定症状が 80%以上の回復率を示しました。その成果を報告した論文が BMC Musculoskeletal Disorders に掲載されます。(日本時間 2019 年 6 月 5 日 9:00)

 むち打ち症(頚椎捻挫)は交通外傷の中で最も多い傷害ですが、難治症例が多く見られ、医療 の分野のみならず社会問題にまで発展しています。難治性むち打ち症の患者は、頚以外の器官に 直接的な損傷が認められないにも関わらず、全身の不定愁訴を伴うことが特徴です。  本研究は、頚部筋群の緊張や攣縮が、全身の不定愁訴に関与していることを示した世界初の知 見であり、難治性むち打ち症の病態解明および原因療法開発の突破口となるものと考えます。

【研究の背景】

 むち打ち症(頚椎捻挫)は、国内外の交通外傷の中で最も多い傷害です。一般的に、「捻挫」や 「打撲」は、最長でも 1 か月以内の局所の安静や消炎鎮痛処置によって治癒しますが、むち打ち 症に限っては症状の長期化で苦しんでいる難治性の患者が多く存在します。

 しかし現時点におい て、むち打ち症についての確定診断は存在せず画像所見も確立されていません。その結果、自賠 責保険などの補償期間も限定されて後遺障害としても認定されず、患者自身が自覚症状を訴え続 けても周囲の理解や同意が得られないのが現状です。

 難治性むち打ち症の最大の特徴は、一般的な「捻挫」や「打撲」が局所の症状を訴えるだけで あるのに対して、その症状が頚以外の全身に及ぶ、いわゆる「全身の不定愁訴」を伴うケースが 多いことです。全身の不定愁訴は、肩こり、頭痛のみならず、めまい、動悸、吐き気、胃腸障害、 視力異常、口渇感、多汗症、冷え症、不明熱、血圧不安定、全身倦怠感、さらには、不眠、うつ 状態、強迫観念、焦燥感などの精神症状など多岐に及びます。

 患者は愁訴に応じて多くの医療機 関を受診しますが、多くの場合は治癒することなく、最終的には精神科に紹介されているケース が多く見られます。それでも治癒は難しく、患者は「泣き寝入り」して我慢するか、中には裁判 となるケースも散見されます。

 東京脳神経センター(下記、施設概要)では、松井病院(香川県観音寺市村黒町 739 番地)と の共同研究で、難治性むち打ち症の病態解明と原因療法の確立を目指して、10 年以上に渡って全 身の不定愁訴を訴えるむち打ち症患者を対象とした治療に取り組んできました。

【研究成果の概要】

  2006 年 5 月~2017 年 5 月までの 11 年間に、東京脳神経センター(以下当センター)または松 井病院を受診した交通事故によるむち打ち症患者の中で、通常の外来治療では治癒せず、かつ頚 以外の部位に 2 つ以上の愁訴を訴えて入院となった患者全 194 名(男 82 名、女 112 名:平均年齢 45.6 歳)を対象としました。

 患者に対して、頚部のみに対する低周波電気刺激療法(SSP と pain topra)と遠赤外線照射を 1 日に 2 度おこないました(図 1)。本治療法は、当センターの松井孝嘉理事長(脳神経外科)が 独自に開発したもので、従来の治療法に比べて、頚部の筋肉の拘縮・攣縮(コリ)を著明に改善 させる効果を示すことが実証されています。

 他の治療介入(薬物療法や物理療法)は一切おこな いませんでした。全身の不定愁訴としては、当センターの経験から最も多い 22 愁訴(図 2)を対 象として、入院時と退院時(平均入院日数:46.1 日)における問診票に基づき、全愁訴数、およ びそれぞれの入院時の不定愁訴の回復率を解析しました。

 全患者の愁訴数は、入院時は 13.1±4.1(平均±標準偏差)でしたが、退院時には 1.9± 1.2 にまで著明に減少しました(P<0.0001)。入院時に 4 つ以上の愁訴を訴える患者数は 99.0%に上り ましたが、退院時には 7.7%にまで減少しました。16.0%の患者さんは全くの無症状(愁訴数ゼロ) にまで回復しました。

 愁訴別の患者数を解析すると、退院時にはうつ症状や強迫観念は全例(100%)が回復し、他の 殆どの全身症状も 80%以上の回復率を示しました。 ところが、興味深いことに、直接刺激をしている頚や肩の症状の回復は 50~60%に留まりまし た。これは、頚部筋群への直接的・局所的な治療効果に加えて、頚部筋群の緊張や攣縮の緩和が 間接的に不定愁訴を改善させるという全身的なメカニズムの存在を示唆するものと言えます。

【今後の展望】

 本研究は、頚部筋群の緊張や攣縮が、全身の不定愁訴に関与していることを示した世界初の知見であり、難治性むち打ち症の病態解明および原因療法開発の突破口となるものと考えます。 我々は、このメカニズムとして、頚部筋群の間を通って全身に分布している副交感神経の関与 の可能性を考えており、現在、更なる詳細な研究を行っています。

 また、全身の不定愁訴を訴えている患者さんは、むち打ち症だけには限りません。当センター による現在進行中の研究によって副交感神経の関与が明らかになれば、副交感神経標的薬剤であ るコリン作動薬およびムスカリン受容体刺激薬に頼る難治性むち打ち症患者のみならず、全身の 不定愁訴患者を対象とした、世界に先駆けての大規模な産学連携による臨床開発研究を見据えて います。

多くの人が悩む原因不明の体調不良、それが不定愁訴

数多くの方が、原因不明の体調不良で苦しんでいます。
・いつも頭が重く、病院に行っても原因がわからない。
・首、肩、背中が痛くて整形外科に行っても異常なし。
・船に乗っているようにフワフワするので耳鼻科に行っても異常なし。
・吐き気、胃部不快感で内科に行き内視鏡検査でも異常なし。
・目が疲れやすいので眼科に行ったが異常なし。
・慢性的に微熱があり血液検査でも異常なし。
・動悸に悩み心臓や循環器系の病院を受診したが異常なし・・・などなど

このように体の不調を感じて病院にかかっても、その原因が特定できないことがとても多いのが現状です。こうした、さまざまな自覚症状があるのに、検査をしても原因が判明しない症状のことを“不定愁訴(ふていしゅうそ)”と呼びます。

全国の病院のおよそ7割が、こうした不定愁訴の患者さんだと言われています。

原因がわからないため、治療のしようもありません。そこで、症状を和らげるための薬が処方されるだけになります。これでは、その場しのぎにしかならず、薬の効果が消えるとまた同じ症状が発症してしまいます。根本的な原因を取り除かない限り完治することはできないのです。

特に「ムチウチ症」「慢性疲労症候群」「自律神経失調症」「頭痛」「めまい」「更年期障害(難治性)」「うつ」「パニック障害」といったものは病気の原因も、発症のメカニズムも解明されていない厄介な病気とされています。

そして、原因がわからないためあちこちの病院にかかった挙句、最終的には心療内科や精神科に行くようすすめられることになります。 こうした原因不明の体調不良「不定愁訴」が、実は自律神経の異常が原因だった・・・というケースが多く見られます。

「首こり」が不定愁訴を発症させることを説明した記事
■ “首こり”から頭痛、めまい、うつ、自律神経失調症が発症する。