首こりが原因で起きる頭痛の特徴とは(1)

慢性頭痛(一次性頭痛)は、大きく分けると、全体の約7割近くが「緊張性頭痛(頚性頭痛・けいせいずつう)」で、残りの約3割が「片頭痛」です。そのほか、患者数は非常に少ないのですが、「群発性頭痛」があります。

緊張性頭痛は首が原因

緊張性頭痛は、頭が締め付けられるような痛みが毎日にように続くのが特徴です。 これは、首の筋肉が硬くなり、頭痛の神経といわれている大後頭神経を筋肉が締め上げて引き起こされる頭痛です。長時間同じ姿勢でいたり、首に強い圧力がかかったりすることが主な原因です。

首にはさまざまな筋肉がついていますが、その中でも頭半棘筋(とうはんきょくきん)が緊張して、凝った状態(首こり)になり、頭半棘筋を貫通している大後頭神経が締め付けられると、緊張性頭痛が起きることを松井医師は頚性神経筋症候群の治療法を開発する過程で発見しました。

緊張性頭痛の痛みの原因は、首の筋肉の中(間)を走行している神経の圧迫にありますから、松井医師はこれを「頚性頭痛(首から頭痛)」と呼ぶのが適切な疾病名であると考えています。

この緊張性頭痛は、従来、鎮痛薬や筋弛緩薬などで、痛みや筋肉の緊張をやわらげる治療法が中心でした。

薬を飲めば一時的に症状は軽減されますが、根本的な治療ではないため、再び頭痛が起こります。これが従来の治療法です。

頭痛専門外来など頭痛を専門にしているところも、薬で一時的に抑える治療しかできません。しかし、首の筋肉を治療すれば、ほとんどの患者さんが、毎日のように続いた痛みから解放されます。


緊張性頭痛と診断され、薬を服用しても痛みの程度や頻度が増えていく場合は、首のコリ(首こり)を疑ってみるべきでしょう。

なお、大後頭神経が刺激されたとき、顔面に痛みが及ぶことがあります。これは、顔面の痛覚をつかさどる三叉神経が脳の中で大後頭神経と至近距離で交わっているためと考えられています。

顔面の痛みは鈍痛で、多くは額に現れます。これはいわゆる三叉神経痛とは異なり、鈍い痛みで、多くは首の筋肉の治療でよくなります。三叉神経痛の場合は、耐えられないような痛みが左右いずれかの顔面に起こります。原因は、動脈が三叉神経に当たるためで、治療は動脈と三叉神経の間にクッションを入れる手術が必要です。

首の筋肉についての記事

首の筋肉のコリ(首こり)とは、どのような状態の事なのでしょう?

頭と首への衝撃や日常の姿勢が問題です

さまざまな体調不良(不定愁訴)を発症させる「頚性神経筋症候群(けいせいしんけいきん しょうこうぐん)」。その最も多く考えられる原因は、頭と首への衝撃です。

自動車事故などで起こる「むち打ち症」はその典型例で、一瞬の衝撃で首を支点に頭部が後ろへ、前へと大きく揺さぶられ、首の筋肉に過剰な負荷を残します。事故直後は何ともなくても、数日から、遅い時には数か月後になって、さまざまな症状が出てきます。

一般的な検査では原因が見つからない場合でも、首の筋肉を調べると、いくつものコリが検出されます。

頭部外傷もむち打ちと同様に、首の筋肉に異常を起こす原因となります。床に寝ている状態で頭を打った時はともかく、通常の頭部外傷では、必ず首の筋肉にむち打ちと同様の外傷が起こります。

その結果、これを放置していると、自律神経失調をきたし、全身の体調不良から「うつ」が生じ、ケースによっては自殺念慮にまで至る恐ろしいことが現実に起きています。

松井医師の診ている患者さんには、自殺未遂や自殺寸前までいった人がたくさんいますが、この方たちの中に、頭部外傷を過去に受けていて、病院を受診した際に頭の検査だけで首の診療をしてもらえなかったという患者さんが非常に多いことがわかりました。

これは、脳神経外科を受診しても、首の筋肉は診察法を知らないドクターが多いことが原因だと松井医師は考えています。

そこで松井医師は、まず2009年7月18日、日本病院脳神経外科学会の特別講演で、首の筋肉の診察法のレクチャーを行い、さらに2009年10月、第68回 日本脳神経外科学会のシンポジウムで、頭部外傷時に頚の筋肉の診察法をドクターが知らないために、首の筋肉の異常を見落として、患者さんがうつや自殺念慮を含む、非常につらい思いをすることがある、ということを啓発しました。

また、日常生活での姿勢も問題になります。今や誰もが肌身離さず持っているスマホや、仕事でなくてはならないパソコンです。見たり、操作するときの俯き(うつむき)姿勢は、首のコリを招く大きな要因です。近頃ではリモートワークで、カフェなどにノートパソコンを持ち込んで、下向き姿勢でタイプしている姿も一般的になりました。

そのほか、書きもの、手仕事などのうつむき姿勢、シャンプーするときのうつむき姿勢も、首の筋肉のコリの原因になります。長時間、うつむき姿勢で固定しないことです。筋肉は休ませながら使ってください。

こうした姿勢は誰もが日常的にとっていることで、避けて通ることはできません。しかし、医療者も一般の人たちも「首コリをとる」という発想がありません。このため、筋肉のコリが慢性化し、頚性神経筋症候群の発症につながっています。

自律神経失調症は、薬、生活指導、心理療法などで治すことは非常に難しいと言えるでしょう。

松井孝嘉(首こり博士)公式サイト

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