実は恐ろしい「スマホ首」の記事が、 2019年12月23日の読売新聞(西部版)朝刊に 掲載されました。

読売新聞(西部版)12月23日(月)朝刊に、ネッククリニック福岡で診察にあたっている松井医師の記事が掲載されました。記事のテーマは近年注目を集めている“スマホ首”です。

首こり博士として知られる松井孝嘉 医師は、約40年にわたり原因不明の体調不良の原因となる“頚筋”の治療や研究を続け、首の筋肉の凝りが自律神経の失調を引き起こし、さまざまな体調不良を発症させることを突き止めました。

これを頚性神経筋症候群(首こりにより発症する病)と命名し、近年ではスマホにより長時間下向きに首が固定されることで首こり病を発症することから「スマホ首」とも呼ばれ、話題になっています。

このスマホ首(首こり病)ですが、慢性疲労、うつ、パニック障害、めまい、動悸、冷えのぼせなど、様々な体調不良ばかりか、自殺念慮の引き金にもなり得るということが臨床結果から見えてきています。

スマホと自殺の関係ですが、アメリカでは2010年から2015年までに中高生の自殺率が31%上昇し、女子では65%上昇しました。2010年は「スマホが普及した時期とちょうど一致する」ため、スマホとの関連性をサンディエゴ州立大学のJean Twenge教授のグループが調査・研究結果を実施しています。

それによると、スマホ使用によって「うつ症状」が急激に上昇するばかりか、自殺念慮は、スマホを使用する時間が1日当たり1時間未満では29%2時間だと33%、5時間以上になると48%に上昇しています。

この研究結果は2017年末にワシントンポストの記事にもなり、2018年にはアップル社の大株主が株主総会でスマホによる対策を要求。アップル社は、これを了承するという動きもあります。

日本では、今年になって、10代の子どもの自殺率が2010年以降に急上昇しているとの報道がニューズウィークに掲載され、また2019年12月19日のメディアでは「視力1.0未満の小中高生、過去最悪に スマホ影響か」のショッキングな見出しが躍りました。

こうした流れに先んじて、「首こり病」を発見した松井孝嘉 医師は「スマホ首」の危険性に警鐘を鳴らし続けています。※下記一例

2016年/スマホの長時間使用が「うつ」の原因に!?
AERA 2013年/うつ、自殺に至るケースも 恐ろしい「スマホ症候群」
メディカルトリビューン2018年/「スマホ首病」がうつや自殺念慮の一因に?
ヘルスプレス2018年/ スマホの普及で急増の自律神経性うつ 「首こり病」治療で改善する!
BAILA 2019年/その不調、もしかしたら首のせい?世にも恐ろしきスマホ首

今やスマホは人々の暮らしに無くてはならないウェアラブル端末です。だからこそ、上手な付き合い方(使い方)が重要になります。つまり、スマホリテラシーの必要性です。

下向きに固定された首だけではなく、SNSなどスマホからの情報が際限なく取り込まれることで引き起こされる認知症同様の症状「スマホ認知症(情報過多シンドローム)」など、やりすぎることの弊害をしっかりと意識して上手に付き合ってほしいと願っています。

<各地の首こり病専門クリニック>
■ネッククリニック福岡 :092-483-6555
■ネッククリニック大阪 :06-6342-5055
■ネッククリニック名古屋:052-533-9180

(C)東京脳神経センター

首のこり「首こり」が原因でうつを発症!? それが「首から“うつ”(頚性うつ)」

実は、うつ(気分障害)の多くは首・自律神経の治療で 改善させることが可能です。

松井医師は多くの臨床例より、首の筋肉異常によって発症する不定愁訴から「うつ」を発症することを突き止めました。そして、このことを「頚筋性うつ」と呼びました。首の筋肉異常が引き金となる頚筋性うつは「頚性うつ」あるいは「首からうつ」と呼ぶこともできます。

繰り返しになりますが、首の筋肉の異常が原因で不定愁訴(原因不明の体調不良)を発症し、さらに首の筋肉の異常が“うつ”を発症させるという、これまでに誰も想像することもなかったことが現実に起きていました。

うつ症状が出ているところに、周囲の人たちの無理解が重なり、さらにどこの病院に行っても原因がわからず、「異常なし」と言われ、その結果、本人だけが苦しみ自殺志向へと向かわせることもある非常に怖い病気です。

しかもこの「うつ」は、精神疾患の「うつ病」とは全く関係ない病気です。これを従来のうつ病と同じ治療を施しても治るわけがありません。

必要なのは適切な診断・治療

このような不定愁訴があると、女性なら、婦人科を受診して「更年期障害」と言われたり、精神症状が強くて心療内科や精神科を受診した場合には「うつ」や「不安障害」あるいは「適応障害」などの病名を付けられることも少なくありません。

これらの病気の特徴的な症状には、自律神経失調症の症状がいくつも含まれるからです。

同じ理由から最近では、まだ医学的に病気の全体像がはっきりしていない「慢性疲労症候群」や「線維筋痛症」と診断されているケースもあります。

診断名はさておき、患者さんが切に望んでいるのは、一刻も早くつらい症状から解放されること、それだけです。しかし、残念なことに、どこの病院やクリニックで治療を受けても改善せず、当センターを受診する患者さんが後を絶ちません。

なぜ、治療をしても治らない不定愁訴があまりにも多いのでしょうか?その理由のもっとも大きな原因が「首の筋肉の異常」であり、これを正確に診断できるドクターがとても少ないからだと考えています。

さらに言えば、その後の適切な治療が行われていないからなのです。なんだか体調がすぐれず、何をしても改善しないのであれば、首の筋肉の異常を疑ってみてください。そしてそれを作り出しているのは、昔のムチウチ症だったり、日常的な猫背、スマホやデスクワークの際の下向きに固定された首の可能性があります。

関連記事
・ その肩こり、もしかしたら首こりかもしれません。

(C)東京脳神経センター

首こりと不定愁訴

動悸、めまい、多汗、不眠、下痢・便秘、ドライアイ・・・つらい症状があるのに、検査をしても異常なし、というケースは少なくありません。こうしたケースでは、検査で異常が認められないため、その症状を緩和する薬の処方だけということが多くなります。

上記のように原因がわからない体調不良を不定愁訴と呼びます。この不定愁訴は広辞苑と医学大辞典にも説明されていますのでご紹介します。

・広 辞 苑:明白な器質的疾患が見られないのに、さまざまな自覚症状を訴える状態。

・医学大事典:自覚症状が一定せず、その時どきによって変化する訴え。動悸、息苦しさ、発汗、頭重、不眠など多種多様であるが、自律神経系が関与する身体的な症状が中心である。幼児期から老年期に至る全ての年齢層にみられるが、初老期(女性では更年期)がいわゆる自律神経失調症にかかりやすいため、特定の病気がなくともしばしば認められる。

そもそも不定愁訴とはどのような状態なのでしょうか?またどういった症状が不定愁訴なのでしょうか?こうした基本的な疑問や、あまり知られていない問題に触れて行きたく思います。

原因不明の病、不定愁訴
頭痛、全身倦怠感(だるい)、慢性疲労(疲れがとれない、疲れやすい)、微熱がある、耳鳴り、めまい、動悸、息切れ、発汗・多汗、冷え性・のぼせ、イライラ、不安感、うつ症状といったさまざまな症状を呈する病気には、神経系、内分泌系の障害や免疫疾患、脳疾患など、重大な病気が存在していることがあります。

繰り返しになってしまいますが、一方でいくら検査をしても、症状の原因となる異常が体の組織や細胞に見つからないことも多いのです。このように、いくつものつらい自覚症状を持ちながら、検査をしてもはっきりとした原因が見つからない症状をまとめて「不定愁訴」と呼んできました。

不定愁訴は“自律神経失調症”の症状です。東京脳神経センターの理事長、松井医師は約30年前に首の筋肉の異常で自律神経失調症を発症することを見つけ、これを「頚筋症候群(首こり)」と呼びました。しかし、その治療法がわからず、試行錯誤の末に2005年、頚筋症候群(首こり)による自律神経失調の症状を改善する有効な治療方法を見つけ出し、完成させるに至っています。

この不定愁訴は、自覚症状があっても、なかなか他の人にわかってもらいにくい、伝えにくい症状であるため、周囲に十分理解してもらえないという特徴があります。そのために、落ち込んだり、ご自身を責めたり、苦悩している方が少なくありません。

あちこちの診療科をめぐったあげく、心の問題だとして、最後にはメンタルクリニックを紹介される方も少なくありません。このような際には、いちど、頚筋症候群(首こり)を疑ってみることをお勧めします。

(関連記事)
■ “首こり”が、 どのように自律神経失調症に影響するのか?
■ 首こり・自律神経失調症よりも危険なケース
■自律神経の機能を検査する 自律神経ドックを開始しました。

自律神経の機能を検査する 自律神経ドックを開始しました。


自律神経というのは、身体の多くの働きをコントロールしています。具体的には、自分の意思にかかわりなく臓器や器官を動かす神経で、たとえば脈拍や血圧、呼吸や消化、体温調節など「生命維持」のために必要な機能を調節しています。

この自律神経が乱れると、以下のような諸症状に悩まされることになりますし、美容や仕事にも差し支えることになります。

たとえば美容面ですと、胃腸機能が十分に働かないと消化吸収が阻害されるうえ、栄養を運ぶ血流も滞ることになり、肌(細胞)の生まれ変わり(ターンオーバー)に必要な材料が十分に運ばれません。そのため肌のみならず髪の美しさが損なわれることになります。

また仕事でも、気分の落ち込みやイライラ、焦燥感などで判断力、コミュニケーション力などが低下することにもなりかねません。

<自律神経の機能異常で発症する諸症状>
・慢性疲労 ・めまい(体が奈落に引き込まれる/ふわふわ感/ふらふら感/周囲が回る) ・うつ、気分障害(やる気が出ない/集中力の低下/イライラ・焦燥感/不安) ・胃部不快感 ・食欲不振 ・下痢/便秘 ・動悸 ・血圧不安定 ・多汗 ・冷え/のぼせ ・体温調節異常 ・ドライマウス ・ドライアイ ・目の奥が痛い ・光がまぶしい ・睡眠障害 など

食の改善、運動などに注意をする方が年々増加していますが、自律神経は生命維持の根本であり、自律神経の健康あってこその食や運動とも言えます。

「自律神経ドック」は、生命活動の原点である最も重要な自律神経機能を検査し、体の状態を把握することができる大切な予防医療です。
◆自律神経ドックのページへ

<自律神経関連記事>
自律神経 関連記事「原因不明の体調不良、自律神経が原因かもしれません。」

首こりの問診表の中で、特に女性に多い症状―3  「頭が痛い・頭が重い」(首から頭痛)

■女性に多い症状3:「頭が痛い・頭が重い(問診表1番)」
頭痛や頭重は、頚筋症候群の患者さん、とくに女性に非常によく見られる症状のひとつです。

とは言っても、発作のように急激に起こる痛みではなく、ほとんど毎日のように、頭が締め付けられるようなジワーッとした痛みや圧迫感が続くのが特徴です。

患者さんによっては「後頭部から首筋にかけて、突っ張った感じの痛み」「鉢巻きで頭を締め付けられるような痛み」などと表現することもあります。あるいは痛みとして感じなくても「なんとなく頭が重い感じ(頭重感)」「頭が雲に覆われたようにボーッとした感じがある」と表現する人もいます。

このような頭痛は、一般には「緊張型頭痛」と呼ばれています。しかし松井医師を筆頭に東京脳神経センターで首こり病・不定愁訴を診療するドクターたちは「頚性頭痛」とも呼んでいます。

なぜなら、患者さんの首や肩、背中の筋肉を調べてみると、とりわけ首の筋肉に著しい“こり”が見られ、これが頭痛の原因になっていると考えられるからです。この頚性頭痛は“首から頭痛”とも呼べるものです。

こうしたケースが非常に多く、いわゆる頭痛(慢性頭痛)のおよそ70%を占めているのが緊張型頭痛と考えられます。これは、首の筋肉の頭半棘筋(とうはんきょくきん)という筋肉を、大後頭神経(だいこうとうしんけい)が貫いていて、頭半棘筋が硬縮すると、大後頭神経を締め付けて頭痛となって現れます。

そこで、頭半棘筋をゆるませる治療をすると頭痛が止まります。

長時間にわたってパソコンや同じ姿勢で作業を続けている人では、夕方になると痛みがひどくなるケースが多いのも、頚性頭痛(首から頭痛)の特徴です。

なお、同じ頭痛でも、ズキンズキンと血管が脈打つような痛みは「片頭痛」と呼び、現在、首のこりと関係ある片頭痛も見つかっています。この片頭痛は血管の拡張が原因とされていますが、そのメカニズムは解明されていません。

片頭痛は女性に多く見られ、子どもや高齢者に見られないのが特徴です。症状を抑えるためには、神経内科などで適切な治療を受ける必要があります。しかし、これは一時の抑えで、根本治療とはいえません。

いっぽうで、首のこりからくる片頭痛も一部に見られることが臨床からわかってきています。

しかし、これまで経験したことがないような激しい頭痛に見舞われた場合は、くも膜下出血など脳の病気が疑われますので、直ちに病院を受診してください。

(問診表解説)「首こり」症状のチェックポイント解説-1

首こりの問診表の中で、特に女性に多い症状―2  「ふらっとする、めまいがある。歩いていたり立っているとき、なんとなく不安定」

前の記事:女性に多い症状―1  「のぼせ、手足の冷え、しびれ」

■女性に多い症状2:「ふらっとする、めまいがある(問診表5番)。歩いていたり立っているとき、なんとなく不安定(問診表6番)」

頚筋症候群(首こり病)の患者さんは振り返ったり、頭の向きを変えようとしたときや、横になっていた姿勢から起き上がろうとしたときなどに「ふらっとする」と訴えるケースが多く見られます。

また、
「いつも船に乗っているようにフラフラする」
雲の上にいるようなフワフワ感がある
「地面が揺れているように感じる」
など、表現は違いますが、めまいや、ふらつきを感じている人が少なくありません。

なかには
「天井がぐるぐる回るように感じる」
「奈落の底に引っ張られていくようだ」
と訴える人もいます。

そういう方が、耳鼻咽喉科を受診すると「メニエール病」や「メニエール症候群」「良性発作性頭位めまい症」などの診断をされることも多いようです。

メニエール病は、理論的には存在する内耳の病気ですが、数は非常に少ないのです。メニエール症候群は、メニエール病に似た病気ということで、一時は「めまい」はほとんどすべてメニエール症候群で片付けられていました。

首の筋肉が原因のめまいがすべてメニエール症候群に入れられてしまっていたため、東京脳神経センターの松井医師は十数年前から「メニエール症候群という病気は存在しない」と言い続け、耳鼻科の先生方も、実体のないメニエール症候群という言葉は最近では使わなくなりました。メニエール症候群がどのような病気かと尋ねても、正確な答えが出せません。

首の筋肉が原因のめまい(頚性めまい)は、じつは非常に多いのですが、このことは耳鼻科の先生方にあまり知られていません。それは首の筋肉が耳鼻科の守備範囲ではないためです。耳鼻科で治療を受けてめまいが治らなかった人が、個人差はありますが松井医師の治療でおよそ9割以上改善しています。

めまいの多くは「首の筋肉が原因である」と言っても、あながち言いすぎではありません。これは治療の実績が示しています。

頚筋症候群(首こり病)は、メニエール病に症状が似ているのでメニエール病や良性発作性頭位めまい症と診断されるケールが良くあります。メニエール病と言われて治療したけれど治らず、松井医師が診察した結果、頚筋症候群つまり首こり病だった、という方はたくさんいます。

めまいは、まず、首の筋肉を疑ってみることも必要でしょう。めまいは、頚筋症候群のなかでも3大症状のひとつに数えられます。

とくに、外傷でむち打ちになったことのある場合は、めまいが強く現れることがあります。そのような時には、首の筋肉のこり(首こり)を疑ってみるべきだと思います。

また、めまいがあると「吐き気」(問診表7番)をともなうことがあります。吐き気は、めまいのほか、頭痛や、自律神経失調症による胃腸の運動障害でも見られる随伴症状のひとつです。

(問診表解説)「首こり」症状のチェックポイント解説-1

首こりの問診表の中で、特に女性に多い症状―1  「のぼせ、手足の冷え、しびれ」

男性と女性を比べると、不定愁訴で悩んでいるのは、圧倒的に女性です。その要因としてあげられることとして、女性は首の筋力が弱く、基本的に自律神経失調症にかかりやすいからです。

問診表の各項目の簡単な説明を以前させていただきましたが、今回はその問診表の中から女性に多い症状を説明したいと思います。

■女性に多い症状1:頭がのぼせる。手足が冷たい、しびれる(問診表29番)
上半身は熱感を伴う「ほてりやのぼせ」(ホットフラッシュ)があるのに、「手や足は冷たい」という「冷えのぼせ」は、女性によく見られる症状です。また「冷え」だけ「のぼせ」だけの症状を抱えている人はさらに多くなるでしょう。
※問診表は下記

昔はこのような症状は「血の道の病」とされてきましたが、今でいう更年期障害とも似ていて、一般には、女性ホルモンの低下にともなう自律神経の失調症だと考えられています。

しかし、のぼせや冷えの原因は、女性ホルモンのアンバランスだけでなく、それ以上に「首こり」が原因になっていることが実際には多いことを、頚筋症候群の治療を通じて実感しています。

女性は首の筋肉があまり発達していないために、首の筋肉に異常が起こりやすいのがその理由のひとつと思われます。頚筋症候群の、のぼせや冷えは「手足が冷たいだけ」「足の先だけ冷たい」などというように、患者さんによって症状の出方が違っているのが特徴です。

これは、問診表10番の「暖かいところ・寒いところに長時間いられない」という症状ともかかわっています。いずれも自律神経失調症のひとつで、体温の調節機能が障害されていると考えられます。

原因不明の体調不良を引き起こす「首こり」という病気は なぜ理解されにくいのか。

以前の記事「多くの人が悩む原因不明の体調不良、それが不定愁訴」で簡単に触れましたが、今回は多くの方が長年にわたって悩んでいる不定愁訴についてです。

原因不明の病気
首が原因の頭痛、めまい、慢性疲労、うつ、イライラ、動悸、不眠・・・・これらは一般的に不定愁訴(ふていしゅうそ)と言われ、病院で診てもらっても「原因不明」とされ、内科などで症状を必死に訴えても、根治的な治療をしてもらえないことが多くあります。

また、病気の苦しさ自体を周囲の人に理解してもらいにくいのも、この病気のつらいところです。周囲からは「怠け病」「仮病」「精神がたるんでいるからだ」などと言われます。

ある患者さんの場合、最初は内科でした。そこでは更年期障害と診断されましたが、軽快することはありませんでした。次は整形外科、その次は耳鼻科へ行き、最後に助けを求めたのが心療内科でした。

患者さんによっては、このほかに消化器科、循環器科、神経内科、眼科などを経由してくることもあります。ともあれ最後にたどり着いたのが、心療内科、あるいは精神科という人は、この病気の患者さんに見られる典型的な例です。

いくら精密な検査をしても、からだに異常が見つからないので心の病気だろう、という結論に達してしまうわけです。心療内科ではSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの抗うつ剤を出されるだけ、というケースがほとんどです。

薬を処方されても、一時的に症状を抑えることしかできず、いつまでもつらい症状から解放されません。なぜなら、この病気は心の病気とは関係のない器質的疾患であることがほとんどだからです。精神病である大うつ病と、自律神経性うつ病の違いについては、また別項目で取り上げることにしましょう。

これらの症状の多くは首に原因があり、適切なケアをすれば、意外と短期間で治るということが、臨床結果からわかっています。しかし、医学界では首の重要性が十分認識されておらず、患者さんもこのことを知らないため、なかなか治療できる場所にたどり着けません。

いったいそれは、どうしてなのでしょうか?

ひとつには、現在の細分化された医療体制を挙げることができます。たとえば日本脳神経外科学会とその関連学会に所属し、そこで首が原因のさまざまな病気の現状や、研究結果などを発表したとしても、他の内科、精神科、耳鼻科、眼科、循環器科、消化器科、整形外科などでは認知されません。ですから、ほかの専門科のドクターに、この病気の存在を知らせることは大変難しくなります。

筋肉は本来、整形外科の領域になります。ところが整形外科医の多くは硬い骨と間接ばかりに関心があり、筋肉を専門にしているドクターはほとんどいないというのが現状です。

女性に多い、不定愁訴
全国の病院のおよそ7割が、こうした原因が特定できない諸症状「不定愁訴(ふていしゅうそ)」の患者さんだと言われています。女性は男性に比べて体の好不調が敏感に現れるようです。そのためでしょうか、若いころから冷えや頭痛、ほてり、便秘、イライラ、うつ状態といった体の不調を訴える方が男性より多く見られます。

このような女性によく現れる症状の数々を不定愁訴と呼んでいます。不定愁訴とは「広辞苑」によると「明白な器質的疾患が見られないのに、さまざまな自覚症状を訴える状態」とあります。「首こりによる副交感神経の異常」という、これまでの検査ではわかりにくい疾患である首こり病(頚性神経筋症候群)。だから理解されないのです。

しかし現在、この不定愁訴に対する医学の歴史が塗り替えられつつあります。繰り返しますが、不定愁訴とは、つらい自覚症状があっても、病院の検査で異常が見つからず、原因が判明しない症状のことです。その不定愁訴と言われる症状は、自律神経失調症の症状なのです。

首こり博士として知られる東京脳神経センターの松井医師が首の筋肉の異常で自律神経失調症が起きることを発見したのは1978年。それから20年をかけて自律神経失調症の治療法を完成させました。これによって、多くの不定愁訴は原因不明の病気ではなく、首の筋肉という生体組織そのものの異常で起こる単純な器質的疾患として治療できるようになったのです。

ただし、下記の記事でご紹介したように、頭痛やめまい、うつ症状などの症状には重篤な疾患が隠されていることがありますので、自律神経失調症と決めつける前に、まずはしっかりとした医療施設で診察を受けることをおすすめします。検査した結果「異状なし」と診断されたのに、さまざまな体調不良が続くような場合は、首こり病が疑われます。
・首こり・自律神経失調症よりも危険なケース

なぜ、首が重要なのか? <首には筋肉と神経が複雑に絡み合っている>

■首の上半分には神経が集中している
“首こり博士”松井孝嘉医師は、首の筋肉のこりを治すことで、原因のわからなかった、さまざまな症状が消えることを発見しましたが、その明確なメカニズムについてはまだわかっていません。

治療法が先に見つかった、と言ってもいいでしょう。このようなことは医学では珍しいことではありません。

まず、首がとても大切な部位であることをご説明したいと思います。

首は細く、日常生活や思わぬ外傷で最もトラブルの発生しやすい部位です。にもかかわらず、これまでは、首の筋肉に起因する病気はないとされてきました。医学での盲点でした。

首には、筋肉と神経が複雑に入り組み、そこに、脳に栄養を送る太い血管が通っています。

首の上半分には神経や血管が集中しています。首の筋肉に異常なこりが発生すると、自律神経に悪影響が出て、さまざまな不定愁訴が発生します。しかし自律神経については、まだ完全には解明されていません。

■首の上部は“脳”の一部

首の上部は、神経の中枢センターである脳の一部と言っても過言ではありません。そのため異常が起きるとたくさんの症状が発症するのです。

しかし、現代医学は首の重要性の認識が甘く、不当に軽視しています。

残念ながら、患者さんの不快な症状が首の異常からきていると診断できる医師は、まだほとんどいないのが現状です。

自律神経の状態を判定する30問問診表はこちら

<問診表の問診項目の解説-その1>
どこに行っても治らなかった病気が首で治せる 「首こり」症状のチェックポイント解説-1

<問診表の問診項目の解説-その2>
どこに行っても治らなかった病気が首で治せる 「首こり」症状のチェックポイント解説-2

首こり病で自律神経失調となった患者さんは 誰も理解してくれない原因不明の体調不良に苦しみます。

『スマホ首病が日本を滅ぼす』より抜粋】

日本語には「肩に重圧がのしかかる」とか「重荷を背負う」という言葉があります。昔から、重荷に打ち勝とうと熱心に仕事をしていると、いつしか前かがみになり、猫背になって耐えしのごうとしてきました。

それは現代のパソコンを使った社会でも同じかもしれません。集中して仕事に打ち込めば打ち込むほど、頭が前方へとせり出し、背中は丸まり、少しうつむきながらの姿勢になっていきます。この時、肩や背中より、もっと重荷がのしかかっているのが首なのです。

首こり病にかかった時、病院などでは一般的にどのように対処しているのでしょうか。Aさん(30代半ばの女性)の発言を例に具体的に見てみましょう。

「内科、脳神経外科、整形外科、耳鼻科・・・いろいろな病院を回りました。結局、最後は心療内科に行かされました。心の病気、うつ病という診断でした」

Aさんが東京脳神経センターを訪れたのは、さんざん病院巡りを繰り返して後でした。どこにでもいるようなごく普通の会社員の方です。ただ、表情に関しては非常に暗く、こう言っては失礼ですが、三十代半ばという実年齢よりやや老けて見えたことは覚えています。

「きっかけは二年前くらいだったでしょうか、仕事中、急に動悸がしはじめたんです。すぐに良くなるだろうと放っておいたんですが、そのうちに手がしびれたり、手足が冷たいのに上半身が熱くてのぼせたり、肩こりもひどかったですね。で、仕方なく内科へ行ったら、あっさり『これは更年期障害です』と言われました。こんな年でもなるんだ、とショックでした」

そして、Aさんは安定剤を処方されました。

「でもまったく良くならなくて、そのうちに、肩こりだけじゃなく、首の後ろや頭まで痛くなってきました。特に夕方になると、張ったような痛みが出てきて、仕事になりませんでした。それで整形外科に行ったんです。念のためということでCTを撮りましたが、どこにも異常はありませんでした。『きっとストレスのせいでしょう。スポーツでもして気分転換をしたらどうですか?』と、お医者さんから言われました。カオイロプラクティックやマッサージにも通ってました。めまいの症状もあったので、それが元凶なのかと思って耳鼻科にも行きました」

そうAさんは話すと、ここからが大変でしたとため息をつきました。

「だんだん疲れが取れなくなってきて、朝、起き上がれなくなりました。遅刻ばかりでいつも上司に叱られました。気が滅入って、仕事もおっくうで、ついには会社を休むようになりました。ちょうど決算期の忙しい時期だったので、同僚からは白い目で見られていました。陰で“あのひとは怠け者だ”と、誰も理解してくれませんでした」

誰も理解してくれない・・・原因不明の症状を抱える患者さんに共通する切実な訴えです。

首こり病という、この病気の大きな問題は、周囲の人の理解が得られないこと。見た目にはなんら健康な人と変わりありませんし、また、がんや心臓病にように直接命にかかわってくる症状には見えませんから、どうしても周囲の人から病状を軽く見られがちです。

いつも一緒に働いている職場の同僚でも、本人がどんなに苦しんでいるかをわかりません。今日は調子が悪いと言えば、

「また怠け病がはじまった」
「精神がたるんでいるからだ」
「気の持ちようでしょう」

などと陰で言われ、あるいは面と向かって言われ、会社内で孤立している患者さんがたくさんいます。

それは家庭内でも同じ。症状が進行すると、Aさんのように出勤することさえ困難になってきます。朝はベッドから起きられず、部屋に引きこもりがちになり、笑顔がまったくなくなり、いつも暗い表情で横になっている。

そんな状況が続けば、長年連れ添ったご夫婦であっても

「会社に行きたくないだけでしょう?」
「いつまでこんなことをしているの?」
「家のローンはどうずるの?」

と、深い溝が生まれ始め、ぎくしゃくとした関係になります。

「誰にも理解してもらえない・・・」原因不明の体調不良を抱えて東京脳神経センターを訪れた患者さんたちは、そのほとんどが口々にこのようなことをおっしゃいます。そのつらさは痛いほどわかります。この病気はからだだけでなく、人間関係の悪化をも招いてしまいます。Aさんも、自分の苦しみを誰にも理解してもらえないつらさを感じていました。

しかし唯一、Aさんの理解者がいました。それは彼女のお母さんです。

「母だけは心配してくれました。私の病気をいろいろと調べてくれて、これは精神的な病気では?と教えてくれて、名医として有名な先生の心療内科にかかりました。そこでうつ病と診断され、今は会社を休職しています。抗うつ剤を処方され毎日飲みましたが、効き目を実感できず、二倍量、三倍量と増えました。しかし気分は良くならず、何か新しい訴えをすると、その度に別の薬が増えて、今では十数種類の薬が処方されています。薬漬け状態です。何も変わらないのでやめたいと先生に言っていました。そんな折に記事で“首こり病”のことを知りました。もしかしたらこの病気ではないのか・・・と思ったのです」

診察に訪れたAさんの問診表を見ると「はい」の数が18個ありました。これはもはや重症の部類でした。彼女がひとりで抱えたつらさは相当だったはずです。

診察・検査・診断後、すぐに治療に入りました。幸いAさんは真面目な方でしたので、きちんと二日に一度、治療に通ってくれました。一種間もすると、頭痛、首こり、肩こりが軽くなり始め、今までなかった笑顔が見られるようになりました。二週間後には気分の落ち込みといった精神症状が取れ、抗うつ剤の量を約三分の一にまで減らすことができました。

Aさんは「人生が楽しく感じられるようになりました」と嬉しそうな笑顔を見せながらも、不思議そうにおっしゃっていました。最後の方まで動悸とめまいだけは残りましたが、このふたつの症状も含め、およそ2ヵ月後にはほとんどの症状が消失しました。

Aさんは、“あれもしたい、これもしたい、ものごとすべて前向きに考えられるようになり、本当に生まれ変わったようだ”とおっしゃってました。 (『スマホ首病が日本を滅ぼす』より抜粋)

■ 自律神経の機能を検査する 自律神経ドックを開始しました。

※東京脳神経センター