“首こり”と“うつ症状”の関係性。

今の精神病としての「うつ」診療とは

「心療内科」あるいは「メンタルクリニック」という看板を、街中でよく見かけるようになりました。今まで精神科の看板を掲げていたのが、よりソフトなイメージを出すようになりました。

こうしたクリニックは大はやりです。東京では、ひとつの大きな駅につき、周辺に5~10ヵ所くらいの心療内科やメンタルクリニックがあるほどです。そのため従来の精神病院に勤務する医師は少なくなり、精神病院は逆に困っているのだそうです。

たしかに、以前のような入りずらさはまったくなくなりました。それだけ心の病が誰にも身近なものになったのだと言えます。中でも、近年爆発的に増え続けているのが「うつ」症状に悩む患者さんです。

ひと口に「うつ」と言っても、それが指し示す内容はひとつではありません。「憂うつである」「気分が落ち込んでいる」というように表現される症状を「抑うつ気分」といいます。そして「抑うつ気分」が重症になったものが「うつ病」です。 一般的に「うつ」という言葉を使う場合、いろいろな程度の患者さんがいることを意味しています。

精神病のうつ病は、まだ発病のメカニズムが解明されていません。

しかし現在、頚性うつ(首から“うつ”)の患者さんはスマホの普及でどんどん増えており、うつ症状のある患者さんの多くは首の筋肉が原因の自律神経異常のうつです。
◆首からうつ「頚性うつ」の記事

先に首こり病(頚性神経筋症候群)の治療では治らないうつ病、つまり精神病のうつについて言うと「大うつ病性障害(大うつ病)」や「双極性障害(躁うつ病)」がそれに相当します。

「大うつ病」とは、症状の強い時は抑うつ状態が非常に強く、ほぼ一日中、ほぼ毎日、長期間(2週間以上)続くような症状を持つものを言いますが、大きな波があり、うつ症状がほとんど出ていない状態もあります。

アメリカ精神医学界が出している診断基準に基づく分類が一般的に使われていますが、そのガイドラインの内容は研究の進展に伴って刻々と変わっています。

「躁うつ病」は、抑うつの状態だけでなく、気分の異常な高揚が続く躁状態も併存するものをいいます。自殺を志向する人が非常に多いことで知られています。

これらの病気の患者さんについては、首に異常があるとは限らず、また首の治療をおこなっても、抑うつ状態が和らぐことはありません。

純粋な精神疾患ですから、治療は精神科による抗うつ剤を中心とした薬物療法、あるいは、カウンセラーやセラピストによる心理学的療法が必要になります。さらに、それでも治らない患者さんには電撃療法(電気けいれん療法/ECT)もおこなわれています。

しかしそれ以外のうつ病と診断された患者さんについては、首こりの治療によって抑うつ状態を緩和することができます。現在増加しているのは「大うつ病」や「躁うつ病」ではない患者さんです。

東京脳神経センターに来院する「うつ病」と診断された患者さんのうち、およそ9割以上がそれにあたります。つまりほとんどのうつ病は、首こり病(頚性神経筋症候群)の治療対象になるわけです。

精神疾患の大うつ病と、首こり病による自律神経性うつ病には、その症状にひとつの大きな相違点があります。それは大うつ病にだけ見られる「理由のない悲しみ」です。悲しみのため、いつも目に涙がたまっているとよく言われます。これは、首こり病による自律神経性うつ病(頚性うつ)ではまず見られません。

大半を占める首の筋肉が原因の「自律神経性うつ」の患者さんは、精神科医による抗うつ剤の投与やカウンセリング、電撃療法(ECT)では効果がまったくないどころか、途中で抗うつ剤の副作用に苦しめられ、治療できないケースも多いのです。

それは当然のことで、別の病気に別の治療をしているからです。これらは、器質的な原因、つまり自律神経の働き、それと密接に関係がある首の筋肉の異常によるものです。これを実証する臨床例は数え切れません。 ※前回の記事では、2020年1月14日に国際医学ジャーナル「ヨーロピアン・スパイン・ジャーナル」に掲載された当センターの研究グループによる研究論文で、うつ症状の完治率が78.1%であることを掲載しています。

抑うつ状態になるのは、精神疾患のせいではなく、自律神経と首、それと全身の不調という三つの要素が生み出す負のスパイラルが原因なのです。

もちろんそれは経験によって裏付けのある考え方です。松井医師によると、「うつ病」と診断された患者さんの頚部を触診すると、その大部分の人の頚部には異常があり、こうした患者さんへの首こり病(頚性神経筋症候群)の治療で抑うつ状態が消えてゆきます。その結果が上記の研究論文にある「78.1%」の改善率ということにつながってきます。つまり首の筋肉の治療でうつ病は治る、ということです。

こうしたケースの場合、顔の表情は暗く、すべてにおいて気分が落ち込んでいますが、治療をするうちに笑顔があふれんばかりとなり、人生が楽しくなり、例えば女性だったら選ぶ服の色などが違ってきて、明るいものを着るようになります。

そしておなかの底から笑えるようになり「もう作り笑いをしなくてよくなった」と言います。治療前に飲んでいた抗うつ剤は、うつ状態が軽くなってくるにしたがって飲む必要がなくなります。

こうした事実を前にすれば、すべてのうつ病が精神疾患であると考えて、抗うつ剤とカウンセリングと電撃療法(ECT)だけに頼っている今の治療は考え直す時期がきていると言えます。それに医療費の削減にもつながるはずです。

重ねて言いますが、現在「うつ病」と診断されているものの多くは心因性のものではなく、器質的なもの、とりわけ首の筋肉が原因になっていると松井医師は分析しています。

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“首こり”が、 どのように自律神経失調症に影響するのか?

首は神経のスクランブル交差点

首の筋肉の異常が、どのようなメカニズムで自律神経に影響を与えているのかは解明されておらず、いまのところ推測の域を出ません。ただ、はっきりしているのは、首の筋肉のコリ(首こり)を解消すると、自律神経失調症の諸症状が治癒するという現実です。

このことに関しては、原因不明の体調不良『不定愁訴』で入院した患者さん1,863名に対し、頚部筋群への局所療法を行なった結果、退院時には不定愁訴28症状が50%以上の回復率を示しました(下記グラフ参照)。

このことを東京脳神経センターの研究チームがまとめた研究論文が、国際医学ジャーナル「ヨーロピアン・スパイン・ジャーナル」に2020年1月14日、掲載されました。

医学では「原因と症状の発症メカニズムが先にわかって、それに基づいて治療法が発見される場合」と、因果関係は不明でも「症状に対する治療法がわかったので、原因が特定でき、症状発症のメカニズムがあとから解明される場合」とがあります。

首こりによって発症する「頚性神経筋症候群」の治療は、まさに後者のケースであり、そのメカニズムの究明には今後の研究に期待がかかります。 首の筋肉の異常がなぜ不定愁訴の原因になるのでしょうか。推察される範囲で説明したいと思います。

まずは、首の大まかな仕組みを述べておきます。

私たちの身体を支える背骨(脊柱)は「脊椎骨(せきついこつ)」という小さな骨が積み重なった構造をしており、椎骨と椎骨の間にはクッションのような働きをする「椎間板」があります。椎骨と椎骨とはベルトのような「じん帯」でつながれています。

私たちが首と呼ぶのは、脊柱の最上部から7個までを指し、解剖学的には「頚椎(けいつい)」といいます。そして、この上にある約6キログラムの頭部を、頚椎をはじめとする椎骨(ついこつ)と頚部(けいぶ)の筋肉が支えているのです。

頚椎をはじめとする椎骨は複雑な構造で連なっており、その周囲をいくつもの筋肉群が取り巻いているので、頭を左右に動かす、首を回す、首を曲げるなどの複雑な動きが可能になるのです。

また、頚椎には脳と直結する「脊髄」を保護する役割もあります。頚椎の中央には、「脊柱管(せきちゅうかん)」というトンネル状の空間があり、その中を脊髄が通っています。

脊髄からは神経が枝分かれし、脊柱の隙間から出て、肩や腕へと伸びています。この枝分かれした神経の根元を「神経根(しんけいこん)」といいます。

「自律神経」は脳や脊柱の神経節をつくり、さらにそこから各臓器に連絡しています。このように自律神経は、身体中に細かい神経のネットワークをつくり、身体の各部所の働きを自動的に調節しています。

首は脳の一部であり、頚椎が主体となった神経の通り道であり、同時に肩や背中の筋肉の一部が首と連携し頭部を支え、動かす中心的な役割を果たしているのです。

首の動きをあやつる筋肉群

さまざまな筋肉に囲まれ、重い頭を支えているのが頚椎です。頚椎のまわりの筋肉には「僧帽筋(そうぼうきん)」「頭板状筋(とうばんじょうきん)」「頭半棘筋(とうはんきょくきん)」「胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)」などがあります。

僧帽筋は、首から背中にかけて大きく広がる筋肉で、問題を起こす首の筋肉のなかではいちばん表層、つまり皮膚に近いところにあります。この筋肉の首・肩部が収縮することで、肩をすくめるように肩甲骨を上内方へ引き上げます。

頭板状筋は、僧帽筋の下にあり、頚椎の後ろから上外方に伸びて後頭骨の外側と結んでいます。両側が同時に収縮すると、頭を後ろへ反らせ、片側だけ収縮すると、そちらのほうへ頭が回転します。

頭半棘筋は、頭板状筋の下にあり、ほぼまっすぐに上下に走って後頭骨と椎骨の後外側を結んでいます。頭を後ろに反らせる働きがあります。

胸鎖乳突筋は、耳の後ろにある骨の出っ張りとその付近から胸骨と鎖骨を結んでいます。左右同時に収縮すると、首をすくめてあごを突き出す形になります。片方だけ収縮すると、顔を反対側へ回しますが、頭全体は前傾しながら同じ方に傾きます。

以上4つの筋肉のほかにも、小さいながらも重要な筋肉がいくつもあります。頚椎と後頭骨をつなぐ「大後頭直筋」「小後頭直筋」、頚椎の外側と後頭骨の外側をつなぐ「上頭斜筋」「下頭斜筋」などです。いずれも頭を後ろに引いて直立に保つ働きをしています。

これらの首の筋肉のこり(首こり)がひどくなると、自律神経に影響し、副交感神経の働きが低下すると考えています。そのために、頭痛や頭重、全身倦怠感、めまい、不眠、イライラ感、動悸、血圧不安定、発汗、目の乾燥など、さまざまな不快な症状が出てきます。正確なメカニズムは現在研究中です。

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自律神経失調症と首こり(首の筋肉)

自律神経失調症は治療の決め手がない?

相反する作用を持つ交感神経と副交感神経のバランスが崩れ、自律神経が変調をきたすと、動悸、めまい、息切れ、手足の冷え、全身倦怠感、頭痛、頭重、肩こり、不眠、イライラ感など、さまざまな症状が現れてきます。

通常の検査をしても、体にはこれといった異常は見当たらない。このような状態を、ひとまず「自律神経失調症」と呼んでいるわけです。

自律神経のはたらきを司っている中枢は、脳の視床下部ということろにあります。この部位には、不安、恐怖、怒り、快・不快などの情動の中枢もあるため、自律神経は感情の影響を受けやすいのです。

緊張すると、動悸が速くなり、トイレに行きたくなるのは誰もが経験していることでしょう。また気持ちが落ち込んだりしたときには、食欲がなくなったり、夜眠れなくなったりします。これは不安や緊張などの感情によって自律神経が大きく影響を受けたことによります。

これまで自律神経失調症の治療は、一般的に、自律神経調整薬などの薬、食事や睡眠などの生活指導、リラックス法、心理療法などが行われていますが、どれも十分な効果が得られなかったのが現状です。

そのために、自律神経失調の症状である不定愁訴をたくさん抱えた多くの患者さんが大病院の外来をワンダリング(病院を渡り歩く)しています。

こうした中、松井医師は、自律神経失調が首の筋肉の異常で起きることを発見し、研究の結果、現在では特定ポイント34か所を突き止め、首の特定ポイントを治療することで自律神経失調症は治療することができるようになりました。

この研究論文(英文)は、2020年1月14日に国際医学ジャーナルである「ヨーロピアン・スパイン・ジャーナル」に、掲載されています(英文)。
◆Cervical muscle diseases are associated with indefinite and various symptoms in the whole body

またその研究内容を元に「メディカルトリビューン健康百科」に記事が掲載されています。
◆不定愁訴治療の鍵は首の筋肉の緊張緩和

このように、首の筋肉のこり(首こり/肩こり)が自律神経に影響を及ぼすことが、自律神経失調症の大きな原因のひとつになっているという発見で、自律神経失調症の治療は大きく一歩前進しました。

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自律神経失調症とはどのような病気なのですか?

自律神経で体の自動調節が保たれています。

私たちの神経系は、大きく中枢神経系と末梢神経系とに分けられます。
中枢神経は、脳と脊椎から成り立っていて、脳は頭蓋骨に納まり、脊椎は脳から垂れ下がるような形で頚椎の中を通っています。

末梢神経は脳や脊椎に発し体の各部に及んでいる神経で、大きく分けると、体性神経と自律神経の2種類があります。

体性神経はおもに筋肉や骨格に分布し、体の各部の運動機能や感覚機能をつかさどっています。例えば手足を動かす、話をする、食事をするといった筋肉や骨を動かすときや、痛みや、冷・熱感などを脳に伝えるときに働きます。別名「動物神経」とも呼ばれている神経です。

一方、自律神経はおもに内臓や血管、分泌腺などに分布し、消化や呼吸、循環、代謝といった、生命を営んでいくうえで必要な生理機能を調節しており、自分の意思とは無関係に働く神経です。

たとえば動悸がしたり、胃や腸の運動や消化液の分泌量を決めるのも、この自律神経のはたらきによるもので、別名「植物神経」とも呼ばれています。

自律神経はさらにその役割として「交感神経」と「副交感神経」の2種類に分けることができます。交感神経はおもに昼間の活動的なときにはたらく神経で、緊張しているときや危険を感じたとき、興奮したときなどにはたらき、心拍数や血圧を上げ、呼吸数を増やし、血管を収縮させ、目の瞳孔を開き、胃腸のはたらきを抑制したりしています。

これに対し、副交感神経はリラックスしているときや、寝ているときなどにはたらく神経で、交感神経とちょうど反対の役割を果たします。

私たちが意思の力で汗を出したり、心拍を速めたりはできません。これらは自律神経が環境に応じて身体の機能を自動的に調節しており、交感神経と副交感神経がバランスよくはたらくことで、私たちの健康と生命は支えられています。そして、このバランスが崩れた状態が自律神経失調症です。

首の筋肉の異常で起こる自律神経失調症は、常に交感神経が強く、副交感神経が弱い状態になります。ただ、自律神経については十分に解明されているわけではありません。首こりの視床下部(内分泌や自律機能の調節を行う総合中枢)への関与についても研究途上です。

運動神経より、自律神経のほうが重要であることは、誰もが認めているところです。運動神経がはたらかなくなっても、手足が麻痺する程度ですが、自律神経は生命に関わるような重大な問題が起こります。

自律神経については、今でもわからないことが多かったので、これを専門にする医師も少なかったのです。解剖によっても、まだ正確にはわかっていません。

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(C)東京脳神経センター

自律神経の機能を検査する 自律神経ドックを開始しました。


自律神経というのは、身体の多くの働きをコントロールしています。具体的には、自分の意思にかかわりなく臓器や器官を動かす神経で、たとえば脈拍や血圧、呼吸や消化、体温調節など「生命維持」のために必要な機能を調節しています。

この自律神経が乱れると、以下のような諸症状に悩まされることになりますし、美容や仕事にも差し支えることになります。

たとえば美容面ですと、胃腸機能が十分に働かないと消化吸収が阻害されるうえ、栄養を運ぶ血流も滞ることになり、肌(細胞)の生まれ変わり(ターンオーバー)に必要な材料が十分に運ばれません。そのため肌のみならず髪の美しさが損なわれることになります。

また仕事でも、気分の落ち込みやイライラ、焦燥感などで判断力、コミュニケーション力などが低下することにもなりかねません。

<自律神経の機能異常で発症する諸症状>
・慢性疲労 ・めまい(体が奈落に引き込まれる/ふわふわ感/ふらふら感/周囲が回る) ・うつ、気分障害(やる気が出ない/集中力の低下/イライラ・焦燥感/不安) ・胃部不快感 ・食欲不振 ・下痢/便秘 ・動悸 ・血圧不安定 ・多汗 ・冷え/のぼせ ・体温調節異常 ・ドライマウス ・ドライアイ ・目の奥が痛い ・光がまぶしい ・睡眠障害 など

食の改善、運動などに注意をする方が年々増加していますが、自律神経は生命維持の根本であり、自律神経の健康あってこその食や運動とも言えます。

「自律神経ドック」は、生命活動の原点である最も重要な自律神経機能を検査し、体の状態を把握することができる大切な予防医療です。
◆自律神経ドックのページへ

<自律神経関連記事>
自律神経 関連記事「原因不明の体調不良、自律神経が原因かもしれません。」

原因不明の体調不良を引き起こす「首こり」という病気は なぜ理解されにくいのか。

以前の記事「多くの人が悩む原因不明の体調不良、それが不定愁訴」で簡単に触れましたが、今回は多くの方が長年にわたって悩んでいる不定愁訴についてです。

原因不明の病気
首が原因の頭痛、めまい、慢性疲労、うつ、イライラ、動悸、不眠・・・・これらは一般的に不定愁訴(ふていしゅうそ)と言われ、病院で診てもらっても「原因不明」とされ、内科などで症状を必死に訴えても、根治的な治療をしてもらえないことが多くあります。

また、病気の苦しさ自体を周囲の人に理解してもらいにくいのも、この病気のつらいところです。周囲からは「怠け病」「仮病」「精神がたるんでいるからだ」などと言われます。

ある患者さんの場合、最初は内科でした。そこでは更年期障害と診断されましたが、軽快することはありませんでした。次は整形外科、その次は耳鼻科へ行き、最後に助けを求めたのが心療内科でした。

患者さんによっては、このほかに消化器科、循環器科、神経内科、眼科などを経由してくることもあります。ともあれ最後にたどり着いたのが、心療内科、あるいは精神科という人は、この病気の患者さんに見られる典型的な例です。

いくら精密な検査をしても、からだに異常が見つからないので心の病気だろう、という結論に達してしまうわけです。心療内科ではSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの抗うつ剤を出されるだけ、というケースがほとんどです。

薬を処方されても、一時的に症状を抑えることしかできず、いつまでもつらい症状から解放されません。なぜなら、この病気は心の病気とは関係のない器質的疾患であることがほとんどだからです。精神病である大うつ病と、自律神経性うつ病の違いについては、また別項目で取り上げることにしましょう。

これらの症状の多くは首に原因があり、適切なケアをすれば、意外と短期間で治るということが、臨床結果からわかっています。しかし、医学界では首の重要性が十分認識されておらず、患者さんもこのことを知らないため、なかなか治療できる場所にたどり着けません。

いったいそれは、どうしてなのでしょうか?

ひとつには、現在の細分化された医療体制を挙げることができます。たとえば日本脳神経外科学会とその関連学会に所属し、そこで首が原因のさまざまな病気の現状や、研究結果などを発表したとしても、他の内科、精神科、耳鼻科、眼科、循環器科、消化器科、整形外科などでは認知されません。ですから、ほかの専門科のドクターに、この病気の存在を知らせることは大変難しくなります。

筋肉は本来、整形外科の領域になります。ところが整形外科医の多くは硬い骨と間接ばかりに関心があり、筋肉を専門にしているドクターはほとんどいないというのが現状です。

女性に多い、不定愁訴
全国の病院のおよそ7割が、こうした原因が特定できない諸症状「不定愁訴(ふていしゅうそ)」の患者さんだと言われています。女性は男性に比べて体の好不調が敏感に現れるようです。そのためでしょうか、若いころから冷えや頭痛、ほてり、便秘、イライラ、うつ状態といった体の不調を訴える方が男性より多く見られます。

このような女性によく現れる症状の数々を不定愁訴と呼んでいます。不定愁訴とは「広辞苑」によると「明白な器質的疾患が見られないのに、さまざまな自覚症状を訴える状態」とあります。「首こりによる副交感神経の異常」という、これまでの検査ではわかりにくい疾患である首こり病(頚性神経筋症候群)。だから理解されないのです。

しかし現在、この不定愁訴に対する医学の歴史が塗り替えられつつあります。繰り返しますが、不定愁訴とは、つらい自覚症状があっても、病院の検査で異常が見つからず、原因が判明しない症状のことです。その不定愁訴と言われる症状は、自律神経失調症の症状なのです。

首こり博士として知られる東京脳神経センターの松井医師が首の筋肉の異常で自律神経失調症が起きることを発見したのは1978年。それから20年をかけて自律神経失調症の治療法を完成させました。これによって、多くの不定愁訴は原因不明の病気ではなく、首の筋肉という生体組織そのものの異常で起こる単純な器質的疾患として治療できるようになったのです。

ただし、下記の記事でご紹介したように、頭痛やめまい、うつ症状などの症状には重篤な疾患が隠されていることがありますので、自律神経失調症と決めつける前に、まずはしっかりとした医療施設で診察を受けることをおすすめします。検査した結果「異状なし」と診断されたのに、さまざまな体調不良が続くような場合は、首こり病が疑われます。
・首こり・自律神経失調症よりも危険なケース

<首こり(首こり病)のおもな症状とは> “首こり”から頭痛、めまい、うつ、自律神経失調症が発症する。

【首こりから不定愁訴へ】
首の筋肉を酷使したり、首にムチウチなどの外傷を受けたりすると、首こりが発生します。

この首こりが、首の中にある神経や血管に悪影響を与えるため、頭痛、めまい、うつ、自律神経失調などの症状が出やすくなります。

自律神経の調子が悪くなると、安静にしていても動悸がしたり、血圧が不安定になったりします。微熱、胃腸障害、ドライアイなども起こります。

また体中がだるくなる、吐き気をもよおす、汗が異常に出る、なんとなく目が見えずらくなる、瞳孔が大きくなって明るいところでも瞳孔が綴じなくなる(まぶしい)、天気が悪くなりはじめると体全体が不調になる、手足が冷え、頭がのぼせて顔が熱くなる、胸が痛くなったり圧迫されたようになる・・・などの症状があらわれます。

これらは、いわゆる「不定愁訴」と言われるもので、以前の“「首こり」症状のチェックポイント解説”記事でご紹介した問診表も、こうした首こり病特有の症状から組み立てています。

その問診表の項目が、首こりによってあらわれる主な症状と言ってもいいかもしれません。

この“首こり”がさらに悪くなると、首の筋肉の異常が原因の「頚性うつ」、「パニック症候群」、「慢性疲労(または慢性疲労症候群)」などの重い症状が出てくる場合があります。


【首の筋肉の異常を治すと・・・】

こうしたさまざまな症状の関連は、これまでの医学ではきちんと理解されていませんでした。

しかし、首の筋肉の異常を治すことで、多くの場合、これらの症状が消えるという臨床的な事実が明らかになりました。

ただし、このような症状は、すべて自律神経失調症、首こり病だとは限りません。下記のような危険なケースもありますので注意が必要です。
■首こり・自律神経失調症よりも危険なケース

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■「首こり」でうつを発症!? それが「首から“うつ”(頚性うつ)」
■ 自律神経の機能を検査する 自律神経ドックを開始しました。

その最新の研究結果として、以前にもご紹介しましたが東京脳神経センターの研究チームによる複数の研究論文(英文)が下記の国際医学ジャーナルに採用されています。もしお時間がございましたら翻訳サイトで日本語に変換してお読みいただければと思います。
◆2020年1月:European Spine Journal
◆2019年6月:BMC Musculoskeletal Disorders

<首の筋肉はとても“こり”やすい> 首の筋肉がこると、神経や血管を圧迫し、不快な症状を発症する。

【首は重い頭を支えている】
人間の頭はLサイズのスイカほどの重さです。その重さは、およそ6キログラムほど。首はこんなに重い頭を支えているため、首の筋肉は、横になっているとき以外はずっと働いています。

それでも均等に使っていれば問題は起きにくいのですが、パソコンに長時間向かったり、スマホやタブレット、読書、調理、ネイルなどなど、下向きに長時間固定される姿勢を続けていると、15分ほどで首の後ろの筋肉が疲労状態になってしまいます。(首の後ろの筋肉は前回の記事に図を掲載しています

この時に首の筋肉の緊張をゆるめて、酸素と栄養を補給すれば、元気な状態に戻りますが、緊張したままだと、“こり”と呼ばれる状態が生じます。これが「首こり」です。

長い間この状態を繰り返していると、筋肉がガチガチになって石のように硬くなってしまいます。

また、首になんらかの外傷が加わった場合も、首の筋肉に異常が起きることが多いようです。

※下記データを東京脳神経センターにて日本語編集
出典:What Texting Does to the Spine|The Atlantic


【首がこると、神経を圧迫する】
前回の記事の首の筋肉の図からもわかるように、首には、たくさんの筋肉があり、頸椎(けいつい)を複雑に包み込んでいます。その筋肉の間に神経が走っています。

とくに首の後ろの筋肉の隙間には、頭痛(後頭神経痛・緊張型頭痛)を生じさせる大後頭神経が走っていて、首の筋肉の周辺には、脳や脊髄から出た神経の末梢部が縦横に分布しています。

そこで、首の筋肉が異常にこってしまうと、周辺の神経や血管を圧迫し、頭痛や自律神経の失調、それにともなうさまざまな不調などの原因になると考えられるわけです。この首こりによって、内分泌や自律機能の調節を行う総合中枢である脳の視床下部の関与の可能性もあります。

日頃より、頭を長時間下向きに固定しない、頭を前に突き出したりせず、バランスの良い姿勢を心がけることが、首こりの予防には何より大切です。また適時、首の後ろの筋肉をゆるめてあげるなど、こうした些細に思えるような取り組みが、重大な体調不良からあなたを守ることになります。

※首こり治療について :東京脳神経センター 首こり病について

なぜ、首が重要なのか? <首には筋肉と神経が複雑に絡み合っている>

■首の上半分には神経が集中している
“首こり博士”松井孝嘉医師は、首の筋肉のこりを治すことで、原因のわからなかった、さまざまな症状が消えることを発見しましたが、その明確なメカニズムについてはまだわかっていません。

治療法が先に見つかった、と言ってもいいでしょう。このようなことは医学では珍しいことではありません。

まず、首がとても大切な部位であることをご説明したいと思います。

首は細く、日常生活や思わぬ外傷で最もトラブルの発生しやすい部位です。にもかかわらず、これまでは、首の筋肉に起因する病気はないとされてきました。医学での盲点でした。

首には、筋肉と神経が複雑に入り組み、そこに、脳に栄養を送る太い血管が通っています。

首の上半分には神経や血管が集中しています。首の筋肉に異常なこりが発生すると、自律神経に悪影響が出て、さまざまな不定愁訴が発生します。しかし自律神経については、まだ完全には解明されていません。

■首の上部は“脳”の一部

首の上部は、神経の中枢センターである脳の一部と言っても過言ではありません。そのため異常が起きるとたくさんの症状が発症するのです。

しかし、現代医学は首の重要性の認識が甘く、不当に軽視しています。

残念ながら、患者さんの不快な症状が首の異常からきていると診断できる医師は、まだほとんどいないのが現状です。

自律神経の状態を判定する30問問診表はこちら

<問診表の問診項目の解説-その1>
どこに行っても治らなかった病気が首で治せる 「首こり」症状のチェックポイント解説-1

<問診表の問診項目の解説-その2>
どこに行っても治らなかった病気が首で治せる 「首こり」症状のチェックポイント解説-2

どこに行っても治らなかった病気が首で治せる 「首こり」症状のチェックポイント解説-2

今回は問診と症状との関係性についてのお話、その2となります。

問診表は、患者さんの訴える症状が、首疲労からきているものなのかどうかを見極めるためのものです。首こり病(自律神経異常)の問診表には30項目あるのですが、それぞれの項目について、前回に引き続いてご説明させていただきます。1回目では問診表の1~3まで解説させていただきました。

2回目の今回は、問診表の4から解説させていただきます。問診表の項目については前回の記事、あるいは東京脳神経センターの問診表をご覧ください。 それでは、問診表の症状チェックポイント解説その2に入りたいと思います。

【首こり度 問診表の症状チェックポイント解説-2】
4:  風邪をひきやすい。風邪気味のことが多い。
これは、首の筋肉の異常により、自律神経のバランスが崩れるために出る症状と考えられます。すぐに体調を崩す方は、この項目をカウントしてください。

5:  めまいがある。天井・外界がまわった。
6:  ふわふわ感。ふらふら感。なんとなく不安定。

めまいの原因が首こりの場合
・天井がぐるぐるまわる
・奈落に引き込まれるような感覚がある
・いつも船に乗っているようにふらふらする
・地面が揺れているようだ
などのタイプのめまいがあらわれます。病院でメニエール症候群などと診断される人も多いようです。

7:  吐き気がある。食欲不振。胃痛不快感。飲み込みにくい。
内科検診を受けても異常が見つからない場合は、首こり病からくる吐き気である可能性があります。

8:  夜、寝つきが悪い。目覚めることが多い。
首の痛みで寝つきが悪くなったり、睡眠中に痛みで目が覚めたりすることがある人は、この項目をカウントしてください。

9:  血圧が不安定である。血圧が200前後になる。
10: 暖かいところ、寒いところに長くいられない。

これらも、自律神経の異常によって起こります。首こりの場合、血圧が高い時と低い時の上下幅が大きくなりすぎることが多くあります。また、暖かいところにいると気分が悪くなったり、寒いところから暖かいところに行くと顔が赤くなってなかなか戻らないという場合もあります。

11: 汗が出やすい。汗が出にくい。
普通にしていても汗がだらだら出てくるような人は、この項目をカウントしてください。夜間に何度も下着を替える人もいます。

12: 静かにしているのに心臓がドキドキする。急に脈が速くなる。
「動悸(どうき)」「心悸亢進(しんきこうしん)」とよばれる症状で、自律神経の異常が原因です。体を動かしているわけでも、心臓が悪いわけでもないのに急に脈が速くなるようなら、首こり病の可能性があります。

13: 目が見えにくい。像がぼやける。
14: 目が疲れやすい。目が痛い。
15: まぶしい。目を開けていられない。

首の筋肉を傷めることで自律神経に異常が起き、瞳孔が開きっぱなしになるために出てくる症状です。

16: 目が乾燥する。涙が出すぎる。
17: 口が乾く、つばが出ない。つばが多い。

目薬をさして目を休めても「ドライアイ」の症状が良くならない場合、首の治療で完治する可能性があります。涙が出すぎる人もいます。また、つばが出すぎたり、出なくて口の中が乾燥する人もいます。

18: 微熱が出る。その原因が不明である。(37度台、38度台になる場合も含む)
慢性的に微熱があるのに、血液検査などあらゆる検査を受けても異常がない場合、首の異常が原因であることがあります。

19: 下痢をしやすい。便秘・腹痛などの胃腸症状がある。
胃腸の働きを司っているのも自律神経です。自律神経の異常から胃腸が正常に機能しなくなり、これらの症状が出ることがあります。

20: すぐ横になりたくなる。昼間から横になっている。
これは、首こり病の最大の特徴です。首の筋肉が疲労して頭を支えられなくなっているため、横になって首を頭の重みから解放するとラクになるためです。

21: 疲れやすい(全身倦怠)。全身がだるい。
首こり病で自律神経の失調が起こると、体中の調節機能の働きが悪くなり、その結果、全身に倦怠感が生じます。

22: 何もする気が起きない。意欲、気力がない。
24: 気分が落ち込む。気が滅入る。
25: ひとつのことに集中できない。
26: わけもなく不安だ。いつも不安感がある。
27: イライラしている。焦燥感がある。
28: 根気がなく、仕事や勉強を続けられない

比較的軽度の25、27、28を放置していると、22、24、26などの重い症状に発展することが多いようです。「認知症では・・・」と心配している人も、首こり病の場合があります。

23: 天候悪化の前日、症状が強くなる。天気予報がよく当たる。
これは、気圧が筋肉の状態に影響するために起こると考えられます。気圧が下がり始めると症状が悪化し、雨が降って気圧が低いときでも、気圧が一定であれば症状の悪化は止まることが多いのです。

29: 頭がのぼせる。手足が冷たい。しびれる。
「冷え性」は、自律神経の失調による典型的な症状です。上半身には「ほてり」や「のぼせ」があるというケースも多く見られます。

30: 胸部が痛い。胸部圧迫感がある。胸がしびれる。
心臓に異常がないのに、こうした症状が見られる場合、首の異常が原因であることが多くあります。「喉がつまっているような感覚がある」という患者さんもおられます。

みなさんは、前回と今回の問診表で、いくつ当てはまったでしょうか?
こうした原因不明の体調不良は不定愁訴と呼ばれているものです。もしも5項目以上当てはまった人は、首の筋肉の異常により起こる首こり病(頚性神経筋症候群)の可能性がありますので、いちど診察することをおすすめします。

・4項目以下の人・・・・・・特に問題なし
・5~10項目の人 ・・・・・・軽症
・11~17項目の人 ・・・・・中症
・18項目以上の人 ・・・・・重症

■首こり病外来についてのご案内