以前の記事「多くの人が悩む原因不明の体調不良、それが不定愁訴」で簡単に触れましたが、今回は多くの方が長年にわたって悩んでいる不定愁訴についてです。
原因不明の病気
首が原因の頭痛、めまい、慢性疲労、うつ、イライラ、動悸、不眠・・・・これらは一般的に不定愁訴(ふていしゅうそ)と言われ、病院で診てもらっても「原因不明」とされ、内科などで症状を必死に訴えても、根治的な治療をしてもらえないことが多くあります。
また、病気の苦しさ自体を周囲の人に理解してもらいにくいのも、この病気のつらいところです。周囲からは「怠け病」「仮病」「精神がたるんでいるからだ」などと言われます。
ある患者さんの場合、最初は内科でした。そこでは更年期障害と診断されましたが、軽快することはありませんでした。次は整形外科、その次は耳鼻科へ行き、最後に助けを求めたのが心療内科でした。
患者さんによっては、このほかに消化器科、循環器科、神経内科、眼科などを経由してくることもあります。ともあれ最後にたどり着いたのが、心療内科、あるいは精神科という人は、この病気の患者さんに見られる典型的な例です。
いくら精密な検査をしても、からだに異常が見つからないので心の病気だろう、という結論に達してしまうわけです。心療内科ではSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの抗うつ剤を出されるだけ、というケースがほとんどです。
薬を処方されても、一時的に症状を抑えることしかできず、いつまでもつらい症状から解放されません。なぜなら、この病気は心の病気とは関係のない器質的疾患であることがほとんどだからです。精神病である大うつ病と、自律神経性うつ病の違いについては、また別項目で取り上げることにしましょう。
これらの症状の多くは首に原因があり、適切なケアをすれば、意外と短期間で治るということが、臨床結果からわかっています。しかし、医学界では首の重要性が十分認識されておらず、患者さんもこのことを知らないため、なかなか治療できる場所にたどり着けません。
いったいそれは、どうしてなのでしょうか?
ひとつには、現在の細分化された医療体制を挙げることができます。たとえば日本脳神経外科学会とその関連学会に所属し、そこで首が原因のさまざまな病気の現状や、研究結果などを発表したとしても、他の内科、精神科、耳鼻科、眼科、循環器科、消化器科、整形外科などでは認知されません。ですから、ほかの専門科のドクターに、この病気の存在を知らせることは大変難しくなります。
筋肉は本来、整形外科の領域になります。ところが整形外科医の多くは硬い骨と間接ばかりに関心があり、筋肉を専門にしているドクターはほとんどいないというのが現状です。
女性に多い、不定愁訴
全国の病院のおよそ7割が、こうした原因が特定できない諸症状「不定愁訴(ふていしゅうそ)」の患者さんだと言われています。女性は男性に比べて体の好不調が敏感に現れるようです。そのためでしょうか、若いころから冷えや頭痛、ほてり、便秘、イライラ、うつ状態といった体の不調を訴える方が男性より多く見られます。
このような女性によく現れる症状の数々を不定愁訴と呼んでいます。不定愁訴とは「広辞苑」によると「明白な器質的疾患が見られないのに、さまざまな自覚症状を訴える状態」とあります。「首こりによる副交感神経の異常」という、これまでの検査ではわかりにくい疾患である首こり病(頚性神経筋症候群)。だから理解されないのです。
しかし現在、この不定愁訴に対する医学の歴史が塗り替えられつつあります。繰り返しますが、不定愁訴とは、つらい自覚症状があっても、病院の検査で異常が見つからず、原因が判明しない症状のことです。その不定愁訴と言われる症状は、自律神経失調症の症状なのです。
首こり博士として知られる東京脳神経センターの松井医師が首の筋肉の異常で自律神経失調症が起きることを発見したのは1978年。それから20年をかけて自律神経失調症の治療法を完成させました。これによって、多くの不定愁訴は原因不明の病気ではなく、首の筋肉という生体組織そのものの異常で起こる単純な器質的疾患として治療できるようになったのです。
ただし、下記の記事でご紹介したように、頭痛やめまい、うつ症状などの症状には重篤な疾患が隠されていることがありますので、自律神経失調症と決めつける前に、まずはしっかりとした医療施設で診察を受けることをおすすめします。検査した結果「異状なし」と診断されたのに、さまざまな体調不良が続くような場合は、首こり病が疑われます。
・首こり・自律神経失調症よりも危険なケース